2018年11月14日(水)

有料動画作品、米で高評価 高い質生む環境 広がるか
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2018/10/5付
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NIKKEI MJ

先日、米国のエミー賞の受賞作品が発表されたが、興味深い現象が起きていることをご存じだろうか。

ネットフリックスは有名俳優を起用した独自ドラマなどを相次ぎ制作している=ロイター

ネットフリックスは有名俳優を起用した独自ドラマなどを相次ぎ制作している=ロイター

エミー賞は、テレビ番組の最高峰を決める賞で、テレビドラマにおけるアカデミー賞と言った方が分かりやすいだろうか。そのエミー賞の受賞作が、アマゾンプライム・ビデオやネットフリックス、HBOという有料の動画配信サービスやケーブルテレビ局による作品ばかりになっているというのだ。

日本でドラマと言えば、NHKや民放など地上波テレビ局が制作しているものが中心のため、イメージしにくいかもしれない。米国では、アマゾンやネットフリックスのような課金型ビジネスの事業者が自社制作しているドラマが、地上波のテレビ局で放映されるドラマよりも評価を高めているというわけだ。

授賞式では俳優のジェフ・ダニエルズが、「アーティストにアーティストとしていさせてくれてありがとう」とネットフリックスに感謝したそうで、現地の俳優がネットフリックスをどう受け止めているかが分かる逸話と言える。

米国では地上波のドラマは視聴率次第で早期打ち切りになることも多いそうで、視聴率に左右されないドラマづくりができるネットフリックスの環境に感謝しているということなのだろう。

米国と日本ではドラマを巡る事業環境が全く違うので、日本でも同じことが起こるとは言えない。だが、広告で成り立つ無料配信と、有料配信のトレンドに明らかに一石が投じられている点は興味深い。

インターネットの普及で拡大したのは、広告で稼ぐコンテンツの無料化だった。昔は新聞や雑誌に掲載されている「記事」は、お金を払って買って読むのが当然だったが、今やインターネット上で無料で読める記事があふれかえる。多くのメディアが無料で記事を公開するのは、グーグルといったネット広告による収入が期待できるためだ。

ネット動画もユーチューブなど無料の動画サービスが急速に普及し、一時期は地上波と同じような質の高いコンテンツも無料配信の広告モデルが主流になるのではないかと考えられていた。

ただ現時点では、米国のドラマ業界は広告モデルを軸にした無料配信ではなく、有料配信を中心にネット動画に向き合っているようだ。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

無料配信による広告モデルには、幅広い企業や個人に情報発信による収入を得られる道を開いたという利点もある一方で、大げさな記事タイトルや違法行為ギリギリの行為でなんとか注目を集めようとする動画が増える傾向もある。

また、低コストで記事を量産し広告収入を得ようとして他人の記事や動画を違法にコピペする悪質なケースも後をたたない印象もある。

他のコンテンツにおいてもネットフリックスのように新しいネットの課金モデルが機能すれば、ネットフリックスに俳優が感謝をしているように、質の高いコンテンツを生み出すライターやアーティストの活躍の選択肢が増える可能性は十分ありそうだ。

[日経MJ2018年10月5日付]

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