2018年12月12日(水)

優れたがん治療薬生んだノーベル賞研究

2018/10/2 0:52
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本庶佑京都大学特別教授らにノーベル生理学・医学賞の授賞が決まった。がんの「特効薬」に道を開いた、免疫の仕組みに関する研究が高く評価された。地道な基礎研究が新薬を生んだ好例で、こうした流れを絶やしてはならない。

日本はがんの先端的な診断・治療法で米欧に後れをとってきた。今回の成果は、優れた治療効果を示す抗がん剤「オプジーボ」などに結実し、世界で利用が広がっている。受賞は次代を担う研究者らにとって大きな励みになる。

本庶氏は最初からがん治療薬を開発していたのではなく、基礎研究で偶然、免疫のブレーキ役となる分子をみつけた。予想外の結果にも落胆せず、むしろ興味をもって実験を進めたことが奏功した。

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授も、土壌細菌の地道な研究が感染症治療薬につながった。12年の受賞者、山中伸弥京都大学教授も「予想外のデータこそ面白い」と語っている。

受賞者の足跡からは、産業応用や結果のみを追求するのではなく、熱意をもって興味のある研究をとことん続けることの大切さが浮かび上がる。

政府はイノベーションに力を入れ、大学などの研究にも短期間で目に見える成果を求めがちだ。しかし、ノーベル賞級の研究を育むには腰を据えてじっくり取り組む研究を促す政策も重要だ。

もちろん、研究者も大学にこもっているばかりでは困る。本庶氏は研究成果を医療応用できそうだとわかると、新薬開発を企業に繰り返し求めてきた。ただし、最初に応じたのは米企業だった。

日本の大学や研究機関に対し、米欧の企業は熱心に協力を働きかけてきた。日本企業にも国内の研究にもっと注目し、リスクをとって治療応用に挑んでほしい。

今後は新たな研究資金源として、米欧のような民間の基金が育つことにも期待したい。特に医学系の分野では、患者団体との連携が研究に大きく役立つ。

米欧ではがん、心臓病などの有力患者団体が寄付金をもとに基金をつくり、大規模な研究助成をしている。新薬の臨床試験の情報を患者に広く伝え、参加を呼びかけて開発を後押しする。

大切な研究の芽を政府、産業界、社会が一体となって育て続けないと、優れた頭脳はいずれ枯渇しかねない。

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