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服を捨てないアパレル業に

アパレル業界が売れ残った新品の衣料品を大量に廃棄している実情が明らかになり、消費者から批判が高まっている。日本だけでも廃棄量は推定年100万トンに近く、その多くが焼却処分される。

服は綿花、羊毛などの農畜産物や、石油化学素材で作る。製糸から縫製まで多くの人手が要る労働集約型の産業である。資源と労働の価値を無駄にしないためにも、アパレル業界は生産や販売の適正化に取り組むべきだ。

大量破棄問題はネット上で廃棄現場の写真が出回り、広く知られるようになった。英高級ブランドのバーバリーは服や香水など約41億円相当を燃やして捨てていた。激しい批判でブランド価値の低下を恐れた同社は、廃棄処分を中止して再利用や寄付に回す。

だが問題は高級ブランドに限らない。バブル期に15兆円あった日本のアパレル市場は2016年には10兆円まで縮小した。その一方で、供給量は同年に40億点とバブル期から倍増している。単価の下落もあるが、需要と供給のギャップはあまりにも大きい。

流行品を大量生産するファストファッションの台頭が拍車をかけている。企業は商機を逃すまいと新商品の投入頻度を高め、余ると安売りセールでさばく。元の価格が形骸化した売り方を続ければ、消費者の懐疑心は膨らみ、過剰供給の悪循環も断ち切れない。

まずはIT(情報技術)の活用で需要予測と生産管理の精度を高め、商品企画から店頭に並べるまでの時間を短縮すべきだ。流行にあわせて機動的に商品を投入できれば、無駄な量を作らずに済む。アパレル業界のIT活用は他の製造業に大きく見劣りする。

それでも売れ残った服はリサイクル店に流通させるべきだ。各社は商品イメージの低下を気にして転売に消極的だが、むしろ大量破棄の方が消費者の評価を落とす。

アパレル業界は廃棄問題をむしろ好機と捉えてほしい。無駄を省き、新たな消費を掘り起こす事業モデルを築く気概がほしい。

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