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春秋

高校2年の教室で、ある日、唐突にLGBT(性的少数者)について授業が開かれる。このクラスだけの講義だと知った生徒らは、当事者がいるからではと詮索を始めてしまう――。難しいテーマを繊細に描いた映画「カランコエの花」がロングラン上映を続けている。

▼7月の一般公開から上映期間は延長を繰り返し、館数も増えてきた。中川駿監督によれば原動力はクチコミとリピーターだという。ネットで良さを訴え、みずから何度も足を運ぶ。ファンはそうした活動を「水やり」と呼んでいるそうだ。花をいつくしむように、作品を皆で育てる。作り手と受け手の幸せな関係といえる。

▼今年の邦画界では、似た例に「カメラを止めるな!」という作品もあった。ゾンビ映画の撮影チームを描き、小規模な公開からネットの投稿などで支持を少しずつ広げ、やがて大ヒットに化けていく。登場人物らの一生懸命な姿に心を揺さぶられた観客が、とにかく周りに勧めたくなる。その応援の積み重ねが実を結んだ。

▼ネット時代の売り方の鍵は「愛」です。そんな説を10年以上も前、専門家から聞いたことがある。当時は「?」と思ったが、いまはなるほどと感じる。好きになったものだからこそ人は魅力を説き、共に育てたいと願う。持てば差がつく。見ていないと恥をかく。そうした煽(あお)りで人が動いた時代は遠くなったということか。

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