春秋 - 日本経済新聞
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春秋

「ベルサイユのばら」など数々の舞台の脚本や演出を手がけた宝塚歌劇団の植田紳爾さんが、4年前「私の履歴書」にこんなふうに書いていた。ある時期からトップ男役が就任すると「おめでとう」ではなく「あとは退団だけが君の仕事だ」と声をかけるようになった。

▼トップは連日、強烈な光と熱を浴び、数千人に注視される。消耗は想像以上だ。いっそう成長した姿をファンらに見せて、いい形で退いてほしい。だから退団の2文字を持ち出すのだ、と植田さんは続けている。「生徒」と呼ぶ劇団員への深い信頼があり、その期待にトップも応え、身を削るように舞台を務めるのだろう。

▼きのう自民党総裁選で安倍首相が3選を果たした。トップでいられる歳月も最長あと3年となったわけである。任期満了まで、どんな実績を残せるだろうか。社会保障の大胆な改革や憲法改正に取り組むと明言はしているが、来年の統一地方選や参院選、さらには消費増税と、越えねばならぬ山はひとつやふたつではない。

▼開票結果は1強の岩盤にくさびを打ち込んだかのようである。だが、いらぬ犯人捜しや締め付けはよすがよかろう。モリカケの混乱や側近の不用意な言動と相まって、美しからざるフィナーレの予兆となりかねない。多くのトップを見送った植田さんの弁。「スポットライトは、舞台の厳しさをわきまえた者だけに当たる」

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