2019年3月23日(土)

将来世代への責任果たす3年に

2018/9/20 23:15
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自民党の安倍晋三総裁が20日の総裁選挙で対立候補の石破茂氏を破り3選を果たした。任期は2021年9月までの3年間。6年前に経済再生を訴えて総裁になり首相に就いた安倍氏は、残り3年間でその仕上げと同時に、社会保障・財政健全化など将来世代にも責任をもつ政治を進めてほしい。

安倍首相は総裁選後の記者会見で、有効求人倍率など数字を並べて、経済政策の実績を自賛した。

社会保障の改革を急げ

首相が主張するように安倍政権下で雇用や企業収益は改善し、景気拡大も緩やかながら戦後最長をうかがうところまできている。ただ、石破氏が言うように景気回復の実感を得られない地方や中小企業があるのも事実だろう。

残り3年で労働市場改革や規制改革など潜在成長力を高める政策を加速すべきだ。安倍政権は発足当初は成長戦略に熱心だったが、最近は推進力が弱まっている。成長力が高まれば、首相が表明した日銀の金融緩和の出口の道筋をつけることも可能になる。

足元の経済だけでなく将来世代にも目を向けた政策運営を求めたい。最大の課題は、少子・高齢化に対応した社会保障制度の改革と、先進国で最悪の財政赤字をどう減らしていくかである。

社会保障の制度の持続性を高め、若者と将来世代の保険料・税負担が過重になるのを防ぐべきだ。現世代に相応の負担を求め、受給者には給付抑制を受け入れてもらう政治の努力が不可欠だ。

首相は「社会保障改革は給付カットや負担増の議論ばかり」と語っているが、これまで十分な改革を実行したとはいえない。

厚生労働省によると、年金と医療・介護などを合わせた40年度の社会保障給付費は今より70兆円増え190兆円になる見通しだ。給付費が経済成長を上回るペースで伸び続ければ、制度の持続性は危うい。まずは増加する70兆円を圧縮する改革が不可欠だ。

首相は「今後1年間は働き方改革に集中し、医療・年金改革はその後2年間で」という計画を示したが、悠長にすぎる。早急に実施すべき給付抑制策は2つある。

医療では、75歳以上の高齢者の窓口負担を現行の10%から20%に上げる法改正を急ぐ必要がある。戦後ベビーブーム期に生まれた団塊世代は22年から75歳になり始める。改革はその前に実施することが重要だ。

年金では、支給額の改定率を賃金・物価の変動率から一定の率を引いた値にとどめる「マクロ経済スライド」をフルに発動できるようにすべきだ。

社会保障改革と財政健全化は表裏の関係だ。安倍政権は消費税率引き上げを2回見送り、基礎的財政収支を黒字にする目標を20年度から25年度に先送りした。

首相は19年10月の消費税率の10%への上げは予定通り実施するとしているが、これは安倍政権発足前の12年に与野党3党で合意した水準だ。10%の先の引き上げも含む財政健全化計画をつくり実行に移すべきだ。将来世代に配慮した改革は長期政権の責務である。

安倍首相が得た地方票は全体の55%にとどまった。陣営の目標通りとはいえ、議員票の8割超に比べるとかなり低い水準だった。

政策の優先順位考えよ

また、世論調査などをみると、石破氏は総裁選と関係ない無党派層でかなりの人気だった。これは有権者の間に安倍政権への根強い不信や不満があることの表れとみるべきだろう。

安倍首相は森友・加計問題に触れられると、「これからも丁寧に説明する」としつつも、「昨年の総選挙で国民の審判を仰いだ」などとむきになって反論する場面が少なくなかった。

首相は全国民を代表して行政権を行使する立場にある。自らの主張を常に100%押し通そうとすれば、あつれきは避けがたい。長期政権になればなるほど、周囲は甘言ばかりになるものだ。これまでよりさらに国民の声に耳を傾ける姿勢で、政権運営に臨んでもらいたい。

「憲法改正にいよいよ挑戦し、新しい国づくりに挑んでいく」。安倍首相は記者会見でこう強調した。だが、自民党が今年の党大会で打ち出した4項目の改憲案は生煮え感がある。野党どころか、連立を組む公明党でさえ賛同していない。

こうした状況で首相主導で改憲を急げば、政権の体力をムダに消耗しかねない。憲法論議を活発にすることは日本の将来にとって重要ではあるが、政権運営の優先順位をよく考慮すべきだ。

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