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釜石、ラグビーW杯で目指す町の「夢」 開幕まで1年

2018/9/20付
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ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の象徴的な会場となるのが岩手県釜石市だ。東日本大震災の傷から立ち直りつつある町で開かれる世界大会。地元の文化や記憶を後世に、世界につなぐ機会になる。

釜石鵜住居復興スタジアムの初試合で、大漁旗を振り地元の釜石シーウェイブスの応援をする住民ら(8月、岩手県釜石市)

釜石鵜住居復興スタジアムの初試合で、大漁旗を振り地元の釜石シーウェイブスの応援をする住民ら(8月、岩手県釜石市)

「大好きな釜石のまちで大好きなラグビーの国際大会が行われる」。8月、釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としで高校生の洞口留伊さんが語った。この場所を襲った濁流は小中学校を全壊させたが、洞口さんら生徒約570人は難を逃れた。「釜石の奇跡」と呼ばれる逸話の跡地に今、W杯の会場がある。

■魅力を発信する好機に

新日鉄釜石ラグビー部の日本選手権7連覇は1985年のこと。30年以上を経ても、その記憶は町に息づく。ラグビーの世界大会開催は、被災した釜石の希望となり得る。誘致の声を上げたのは、そう考えた市民たちだった。15年、W杯を主催するワールドラグビーの幹部が釜石を視察。市民は更地となっていた鵜住居に輪をつくり、大漁旗を振って迎えた。この場所にスタジアムをつくり、W杯を開くという強いメッセージが夢を現実に変えた。

誘致へ町が一枚岩だったわけではない。3年前のある調査では、仮設住宅と他の地域では人々の意識に明確な温度差があった。スタジアムの予算があるなら住まいの再建に、という声が上がるのは当然で「復興がどの程度進むかという点をクリアできないと(開催に)手を挙げられないと思っていた」。野田武則市長が当時の葛藤を明かす。

釜石市などは外国人向けに民泊の試験事業を行った

釜石市などは外国人向けに民泊の試験事業を行った

しかし、震災があったからW杯の意義が膨らんだのもまた事実。「小さい町だからこそ夢や希望を大きく持ちたい。住み続けたいと思ってもらえる町でなければいけない」と野田市長。もともと減少傾向だった人口は震災後さらに4千人減り、3万5千人になった。W杯は魅力を世界に発信する好機になる。釜石出身でシーウェイブス所属の高橋聡太郎は「一瞬の盛り上がりでなく継続的な活性化につながる大会にしてほしい」と話す。そのための布石は打たれている。

スタジアム開場の日、敷地の外に7人の外国人がいた。「ここにあった小学校は津波でこうなりました」。ガイドの日本人が3階に乗用車が突っ込んでいる写真を示すと、驚きの声が上がった。市などが始めた民泊の試験事業の一幕だ。

地元の食事や津波被害の紹介、シーウェイブスの試合をセットにしてツアーを組んだ。オーストラリア出身の会社員、ディーン・ダーウィーさんは「震災のことを知ることができてよかった。試合のすてきな雰囲気にも感動した。また家族を連れて来たい」と話す。

■海外のファンから熱い視線

W杯では1次リーグの2試合が釜石で行われ、海外の出場4チームが町を訪れる。初白星を目指すナミビアは不屈の闘志が売り物。前回大会では王者ニュージーランドに気迫のタックルで食い下がった。ほぼ全員がアマチュアのウルグアイは日本と同じ初の8強へ誇りをかけて戦う。フィジーは激戦の1次リーグD組突破へ、魅惑のランニングラグビーでトライ量産を狙う。4チーム目は、11月に行われる敗者復活予選の勝者。最後の出場枠に滑り込み、釜石に乗り込んでくる。

ファンはこの4チーム以外にも世界中から押し寄せる。ラグビーどころで被災地でもある釜石は、海外からのチケット引き合いが特に多い。1年後、チームとファンが地元との間に温かい結びつきを生み、未来へつながる財産となることを期待したい。

(谷口誠)

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