2018年10月16日(火)

「ニセ情報」メッセンジャーアプリにも!? 利用者視点広げる工夫を
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2018/9/17付
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NIKKEI MJ

「フェイクニュース」という言葉が広く知られるようになったのは、ご存じの通り、2016年の米大統領選挙からだ。あれから2年。いまも大統領自身が、批判的なメディアらに「フェイクニュース」とのコトバを投げつけたりと、混沌とした事態が沈静化したとはいえそうにない。

マレーシアなど世界各国でフェイクニュースへの対策が急務となっている=ロイター

マレーシアなど世界各国でフェイクニュースへの対策が急務となっている=ロイター

敵対勢力に投げつけるレッテルとして広がってしまった感のある「フェイクニュース」。人々を混乱させる意図を持つニセ情報から、極端な個人の主観やウワサ話までを含めて「ニセ情報」と呼ぶとすれば、フェイクニュースが生まれ拡散する温床は新たな基盤で勢いをみせている。

情報の真偽を、事実という観点から検証してニセ情報の流通を抑止しようとする人々を「ファクトチェッカー」と呼ぶが、毎年夏に開催される世界的なファクトチェッカー団体の会議が、今年もイタリアで開催された。新たな課題として注目されたのが、「メッセンジャーアプリ」の果たす役割だ。

日本人には「LINE」でおなじみだが、世界で見ると、「ワッツアップ」(月間利用者数15億人)、「フェイスブック・メッセンジャー」(同13億人)、「ウィーチャット」(同10億人)などが勢力を誇る。ちなみにLINEは2億人の規模だ。

ニセ情報の温床は、フェイスブックやツイッターといった大手SNS(交流サイト)だと繰り返し指摘されてきた。SNSは数多くの利用者が思いのままに書き込んだ情報が広範に伝わる場だからだ。では、なぜメッセンジャーアプリが新たに注目されているのだろうか?

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

最大の理由は、大手SNS上でファクトチェッカーによるニセ情報の監視などが進展を見せていることだ。一方で、やり取りが非公開のメッセンジャーでは、ニセ情報がやり取りされても、外部からの監視や介入が難しい。メッセンジャー上でニュースを読む習慣が広がり、数百人程度と規模の大きいチャットグループが普及したりと、ニセ情報が入り込み、伝播(でんぱ)しやすい土壌が整ってきているのも大きな理由だ。

インドでは、児童誘拐や強盗、性犯罪者など、ワッツアップを中心に広がったニセ情報がもとで集団リンチが発生したりと、今年だけでも数十人が殺害されたりしている。インド政府があからさまにワッツアップを非難する事態となり、対策に時間をかけている余裕はない。ワッツアップも新聞の全面広告で注意喚起するなど、対策に必死だ。

台湾で利用者が多いLINEを巡ってもニセ情報対策が動き始めている。同アプリを通じて広がるニセ情報対策として「コファクツ」という「駆け込み相談所」的な取り組みが始まっている。これは、メッセージに自動応答するチャットボット(自動会話ソフト)を利用するもので、利用者は怪しいと感じた情報をコファクツに転送すると、その回答をメッセージとして得られる。

真偽の判定には、ボランティアが取り組む。政治的に偏った情報に対して、その対極となる論を紹介したりと、利用者の視点を広げる工夫も行う。ソフトウエア自体はオープンソース化されており、他の団体が改変して活用できる。同種アプリが普及しているわが国でも、学べる取り組みといえる。

[日経MJ2018年9月17日付]

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