癒やしの坂で丸くなる 猫の細道(広島県尾道市)
おもてなし 魅せどころ

2018/9/19 6:30
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NIKKEI MJ

港町。坂の町。寺町。文学や映画、アニメの町。瀬戸内海に面する尾道(広島県)は、知れば知るほど多くの顔を持つ町だ。中でも最近、注目され始めたのが「猫の町」。西日本豪雨で一時遠のいた客足も戻りつつあり、坂道を自由気ままに歩き回る猫の周りには再び人垣ができ始めている。

至る所で猫に出会える(広島県尾道市の猫の細道)

至る所で猫に出会える(広島県尾道市の猫の細道)

尾道は坂や路地が多く、漁港もあるため昔から猫が多かった。そんな尾道を名実共に「猫の町」にしたのはフランス生まれの芸術家、園山春二さん(74)だ。

園山さんは約35年前、尾道市出身の大林宣彦監督の映画「転校生」に感動し、東京からバイクで尾道にやってきた。たちまち街の魅力に打たれ、眺望が素晴らしい千光寺から下る坂の途中に「招き猫美術館」を開いた。その後、猫グッズを扱う雑貨店「ルシャ」など数々の施設を開設。これらが立ち並ぶ約40メートルを「猫の細道」と名付けた。

細道で出会える猫は、気まぐれで甘えん坊な雌のノアール、やんちゃで人懐っこい雄のティーグル、顎に柄がある雄のゴアなど数十匹。さらに園山さんが丸い石に描いた招き猫「福石猫」も至る所で目につく。

「心が丸くなるように」との願いを込めて日本海の荒波にもまれて丸くなった石に一つ一つ丁寧に絵付けした。じっとこちらを見つめる猫、大きく口を開けてあくびをする猫など様々な表情の3千体。「国内外に旅に出た(人々が持ち帰った)ものを含めると3万体はある」(園山さん)

ハーブ園「ブーケダルブル」には金色の福石猫が隠れている。園山さんが毎日隠し場所を変える。これを見つけると新しい福石猫を1つもらえるという。他の福石猫も時々場所を変えるため、お気に入りを探すのもリピーターの楽しみだ。

細道を見下すカフェ「梟(ふくろう)の館」で休んでいると行き交う英語や中国語、フランス語も聞こえてくる。7月の西日本豪雨直後は客足が途絶えたが、8月以降は前年同期比7~8割まで回復。店主の安達忍さん(48)は「10月には灯(あか)りまつりもある。復調の弾みにしたい」と話す。

細道は今も進化している。ルシャの隣の2千平方メートルには「猫ノ楽園」ができつつあり、近くには「動物共同墓地」も完成した。「ここは本当の猫好きが集まる場所。腹ばいになって猫の写真を撮ってる人を見ても全く奇妙に感じないのはそのため」。愛媛県今治市から来たカップルはそう言ってほほ笑み合った。

(福山支局長 増渕稔)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2018年9月17日付]

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