2018年9月23日(日)

手詰まり感漂う日ロ領土交渉

社説
2018/9/12付
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 安倍晋三首相がロシア極東のウラジオストクでプーチン大統領と会談した。通算22回目の会談となったが、北方領土問題を含めた平和条約締結交渉で目立った進展があったとは言い難い。

 両首脳は今回、領土交渉の一環として進める北方領土での共同経済活動について、事業内容と作業の進め方を盛り込んだ行程表を確認。日本の官民調査団を10月初めに現地に派遣することでも合意したという。首相は「四島の未来像をともに描く作業の道筋がはっきりと見えてきた」と強調した。

 ただし、行程表の公表は見送られた。調査団の派遣も当初は8月に予定されながら、悪天候で延期されていたものだ。行程表では複数の魚種の養殖やイチゴの栽培などが事業候補に挙がっているというが、主権をめぐる互いの法的立場を害さずに、人の往来を含めた事業実施への法的な枠組みを固めるのは容易ではない。

 2016年末の日ロ首脳会談以降、双方は北方領土での共同経済活動に集中して取り組んできた。だが、具体化作業はなかなか前進せず、手詰まり感は否めない。しかも、仮に共同経済活動がいずれ実現したとしても、領土問題の解決に結びつく保証はない。

 プーチン氏は「両国民が受け入れ可能な解決策を模索する用意がある」と語る。とはいえ、難航が予想される共同経済活動を平和条約締結交渉の柱に据えることで、交渉を実質的に引き延ばそうとしているとの印象は拭えない。

 ロシアでは最近、政権の要人が北方領土について「第2次世界大戦の結果、ソ連・ロシア領となった」(ウシャコフ大統領補佐官)と公然と語るようになった。ロシア軍による北方領土の軍備強化も着々と進んでいる。

 日ロの領土交渉の焦点が、共同経済活動に偏りすぎているのは気がかりだ。首脳会談の度に日本側の懸念を明確に伝えるとともに、共同経済活動とは別に、平和条約締結問題を本格的に話し合う枠組みを検討していくべきだろう。

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