2018年11月20日(火)

春秋

2018/9/11 1:10
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スルガ銀行が駿東実業銀行と名乗っていた明治の半ばすぎのことだ。静岡県駿東郡沼津町に移した本店の入り口には、亀の甲の六角形の中に、実業の「実」の字を入れたのれんをかけていた。角と実で、「確実」。安心して取引できる銀行、との意味を込めたのだろう。

▼実の字には「まこと」「真実」といった意味もある。そうした歴史がむなしくなるのが、今回の投資用不動産融資をめぐる不正だ。借り入れ希望者の年収や所得の書類が改ざんされているのを知りながら、組織的に融資をしていた。行員が偽装に積極的に関与していた例もあるという。創業期の精神は風化していたらしい。

▼辞任した岡野光喜会長が社長在任中に、スルガ銀を訪ねて驚いたことがある。社長室をはじめ役員室がガラス張りで、経営陣がいま何をしているか、わかるようになっていたからだ。役員同士ですぐ議論を始められ、同じく辞任した後任社長の米山明広氏もガラス張りの社長室を使った。行員もよく出入りしていたという。

▼しかし、トップからは現場がみえなかったようで、書類の改ざんは放置された。「透明な経営」は形だけだったと言うほかない。第三者委員会は、行内には書類だけそろえればよいという「極端な形式主義」が広まっていたとしている。実体は置き去りにされていた。創業期に掲げた「実」は、どこへ行ってしまったのか。

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