2019年5月27日(月)

若者の起用から始めよ
新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

コラム(ビジネス)
2018/9/11付
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イノベーションを起こす人材を議論する時、いつの時代も時代をつくるのは「よそ者、ばか者、若者」だと言われる。シリコンバレーでそれは顕著だ。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

シリコンバレーでは「よそ者」である移民の割合が4割近くに達し、ユニコーン(企業価値が10億ドル=約1100億円を超える未上場のベンチャー企業)のうち移民が創業した会社の割合は5割を超えた。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はドイツ、オーストリアからの移民の子孫で、スティーブ・ジョブズ氏もシリア移民の息子だ。

人からどんなに「バカ者」だと言われ、理解されなくても自分の妄想に病的なまでに固執し続け、実現させてしまう人物をして「シリコンバレーで成功するのはパラノイア(偏執狂)だけだ」と言ったインテル元CEOのアンディ・グローブ氏の言葉は有名だ。

グーグルやフェイスブックの従業員の平均年齢は30歳を切り、多くの優秀な学生は起業を選ぶ。消費者では1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」が注目されている。前の世代のように作り込まれた完璧さを求める層と、リアリティーのあるありのままの個性を受け入れる層に二極化している。後者は伝統的なラグジュアリーブランドよりも信頼できる透明性の高いブランドを求め、派手なラベルやロゴがない洋服、食品、化粧品を好む。「インスタ映え」とはカラフルな料理のことではなく、ありのままの自然な瞬間なのだ。

ありのままの自分を求めると、店員と顧客の関係ではなく個人と個人の関係になり、仕事とプライベートの境目も曖昧になってくる。こういった若者の変化に気づかず、日本企業は若者の扱いに苦労している。

シリコンバレーで働いていた時に若者が大抜てきされる場面に何度も遭遇した。20代で部門の長になるのは日常茶飯事だ。抜てきが起こるのはポジションが急に空いた時で、「まだ早いのでは」と思うことも多々あったが、半年後には違和感がなくなっている。

変革を起こすサービスや製品もはじめは「そんなものはおもちゃだ」とバカにされる。人材も一緒だ。まだ早いとバカにされるくらいの人を抜てきしないと変革は起きない。ベンチャー企業への投資でも一番は売り上げより企業のポテンシャルを見るように、人材も実績ではなく今後のポテンシャルを重視すべきだ。

日本企業もグローバル企業が実践する「ファストトラック」といった早期選抜を行い、優秀でとがりまくった若者の人材プールを作るべきだ。収入や役職ではなく、徹底的に挑戦させて失敗させる場を与える数をえこひいきすべきだろう。そのためには「仕事」の仮面をとったありのままの姿を見ないと、本当のポテンシャルは見えない。

飲み会でゴルフや自分の武勇伝ばかりを話し、説教するばかりでは「若者」は仮面を外さない。若者の話を心から聞き、肯定し、自分の失敗談を積極的に話し、圧倒的な懐の深さで相手を包み込む人生の「先輩」を求めているのだ。

[日経産業新聞2018年9月11日付]

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