2018年11月18日(日)

人が育む神秘のため池 御射鹿池(長野県茅野市)
おもてなし 魅せどころ

コラム(ビジネス)
北関東・信越
2018/9/9付
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NIKKEI MJ

JR中央本線の茅野駅(長野県茅野市)から八ケ岳方面へ。「湯みち街道」と呼ばれる道路を車で30分ほど森の中を上っていくと、深い緑の水をたたえた「御射鹿池(みしゃかいけ)」が見えてくる。

農業用ため池として造成した御射鹿池を解説するツアーも

農業用ため池として造成した御射鹿池を解説するツアーも

水面(みなも)に吹く風がやむと、カラマツの森が水面に鏡のように映る。神秘的な姿を感じさせるが、御射鹿池は農業用に造られた人工のため池だ。

山から農業用水を引くため江戸時代に水路を作ったが、標高1500メートルを超える高地では水が冷たく農家は苦労していた。水をためて温めようと1933年に御射鹿池が完成。静かなため池にすぎなかったが、東山魁夷の代表作「緑響く」のモチーフとなり、家電メーカーのCMの舞台としても有名になった。

太陽の光の関係で朝方のほうが美しい風景が見られると言われ、早朝は多数のカメラマンが訪れる。また秋はカラマツの黄葉、冬は積雪の白い風景が魅力で、季節を問わず楽しめる。

ただ路上駐車が増え、池のほとりまで立ち入るカメラマンも目立つようになる。池の深さは7メートル。安全面の問題もあり茅野市は昨年、駐車場や歩道を整備し池の周囲に柵を設けた。大型観光バスも立ち寄るようになり、アジアを中心とした海外ツアー客が記念写真を撮る姿も目立ってきた。

観光地化が進む中で、地元では農業用ため池としての本来の機能を理解してもらい、地域交流につなげようと考えている。

ちの観光まちづくり推進機構(茅野市)は今夏、御射鹿池を巡る日帰りツアーを初めて企画した。ツアー客に配布した資料には「村民の生活と共にあった御射鹿池 その美しさ・歴史・苦労を知ってください!」。東山魁夷が滞在した旅館を訪ね、御射鹿池が潤す田園地帯を紹介した。「東山魁夷画伯は白馬を連れてきたのか」「御射鹿池の名前の由来は」。参加者からは様々な質問が飛びだした。

案内は地元の「笹原観光まちづくり協議会推進事務局」の武安茂美さん。「白馬は心の中のイメージからスタートした。緑とマッチする」と解説しながら、御射鹿池の名前が地域の神事に由来することを説明し、「農業用のため池を守っていきたい」と話していた。

推進機構は今後も観光プランを企画する。通訳のできるスタッフもおり、ホームページの外国語対応も進め、御射鹿池の海外発信も視野に入れている。

(松本支局長 竹内雅人)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2018年9月9日付]

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