2018年9月20日(木)

投資だけでないVCの「顔」
SmartTimes グロービス・キャピタル・パートナーズパートナー 高宮慎一氏

コラム(ビジネス)
2018/9/7付
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 スタートアップの躍進の原動力の一つに、ベンチャーキャピタル(VC)業界の立ち上がりがあるが、その全体像についてはあまり知られていない。VCというと、一般的にはスタートアップに投資して支援する会社というイメージだ。しかし、それは一つの側面にすぎない。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

 VCのファンドは、日本だと数十億~数百億円程度となっており、その資金は年金基金、生損保と言った機関投資家、事業会社、富裕層から集めている。つまり、投資家のお金を預かってリターンを返す資金運用受託者という側面があるのだ。通常、VCに期待されるリターンは、十年間で2倍程度となっている。

 その対価としてVCは2種類の収益を得る。管理報酬とキャリー(成功に連動した利益分配)だ。管理報酬は運用金額の2~3%程度。キャリーは投資家にリターンを1倍返した後の20%程度を利益分配的に得る。VCへのインセンティブ設計として投資家と利害が一致し、リターンを最大化するようになっている。

 また、投資家は、未上場株へ投資するためVCに資金を預けている。通常、投資家はリスク分散のため、上場株、債券、不動産など様々な資産分類に資産を配分している。その最適な分散を維持するため、VCの投資先が上場すると、一定期間内で保有株式を売却することを期待する。「上場したからといって株を売却するのはいかがなものか」という声も聞かれるが、上場時の株式売却は、VCのビジネスモデルの定義そのものとも言える。

 次は、起業家の伴走者としての顔だ。VCの最も基本的な提供価値は「リスクマネー」の供給だ。スタートアップに株式で資金を提供することで、そのスタートアップが倒産してしまったとしても、起業家個人に返済義務が及ぶことはないため、起業家はリスクをとりやすくなる。

 そして、まさに昨今の流れが、VCのお金以外の支援での付加価値の拡大だ。筆者が所属するグロービス・キャピタルでも、社外取締役として経営支援するとともに、採用、マーケティング、広報、投資家コミュニケーションなどの実務など、投資先への付加価値提供の拡大に努めている。

 見落とされがちなのが、VCという事業体の経営の側面だ。事業会社と同様、組織運営が重要で、どのようなテーマ、ステージ、地域に投資するかという投資戦略に加え、付加化価値拡大など競争優位性の構築するための戦略、それに合わせ組織をいかに築くなどがキーになってくる。

 起業家が社会の問題を解決し、大きく事を成し遂げようとするのに対して、VCはあくまで支援者であり黒子だ。ただ、投資家とスタートアップの橋渡しになり、大きな資金を呼び込み、新しい産業を生み出すインフラになることが、VCの使命だと思っている。

[日経産業新聞2018年9月7日付]

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