2018年9月25日(火)

株主が迫るESG経営 厳しい目、取り組み後押し
Earth新潮流 日経ESG編集部 半沢智氏

コラム(ビジネス)
2018/9/7付
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 投資先を選ぶ際に企業のESG(環境・社会・ガバナンス)を評価する「ESG投資」が、企業経営を揺さぶっている。ESG投資は資産を大規模に運用する機関投資家を中心に取り組みが進んでいる。この動きがいま、個人の投資家や株主に広がっている。

 6月下旬にピークを迎えた株主総会では、ESGに関する株主質問が相次いだ。特に多かったのが、国内で深刻化する人手不足に関する質問だ。この社会問題にどのように取り組んでいるのか。業種を問わず、人材の確保や育成に関する質問が飛んだ。

 働き方改革や女性の活躍にも厳しい視線が注がれた。6月21日に三菱重工業が開催した株主総会では、株主が「取締役会のダイバーシティ(多様性)についてどう考えているのか」と経営陣に迫った。

 三菱重工に11人いる取締役のうち女性は1人。管理職に占める女性労働者の割合も1.8%にとどまっている。宮永俊一社長は「(5月に発表した)中期経営計画の柱にダイバーシティを位置付けて取り組む。人材戦略を成長の信頼として、キャピタルゲインに結び付ける」と答えて理解を求めた。

 ガバナンス面では、取締役会の実効性や、社外取締役の役割に関する質問が多かった。6月1日に日本取引所グループが改訂コーポレートガバナンス・コードを公表した直後の株主総会だったため、改訂コードを踏まえた質問も多かった。

 経営再建を図る東芝が6月27日に開いた株主総会に参加した株主は「取締役会で社外取締役が過半数を占めながら不正会計を防げなかった。社外取締役に緊張感がなく、単なる名誉職になっているのではないか」と詰め寄った。

 これに対して、社外取締役で取締役会議長の小林喜光氏は「緊張感がないということは決してない。社外取締役に就任して2年と9カ月、業務の監督に努めてきた。今後も業務監督に加え、企業ブランド向上、ポートフォリオ管理などを通じて再生計画に貢献していく」と答えた。

 国内企業で品質不正が相次いだなか、品質管理や子会社管理に関する質問も多かった。

 三菱ケミカルホールディングスが抱えるグループ会社は400社を超える。6月26日に開催した株主総会では、株主から「海外子会社を含むグループガバナンスは大丈夫か」という声が上がった。企業側は、本社で「グループガバナンス・コード」を定めて子会社に導入を求め、海外にガバナンスの統括拠点を設置して支援していく方針を示した。

 環境面では、二酸化炭素(CO2)排出の原因となる石炭産業への投資や融資を引き上げる「ダイベストメント」が海外を中心に活発になっている。みずほフィナンシャルグループが6月22日に開催した株式総会では、株主が同社の融資方針を問いただす一幕があった。

 企業価値向上の手段として、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献を打ち出す企業もあった。

 三菱ケミカルホールディングスの株主総会では、株価への不満を声にした株主に対し、越智仁社長が「非財務価値の向上とSDGsへの貢献を通じて社会へ貢献することが企業価値の向上につながる」と述べ、長期視点の取り組みの理解を求めた。

 富士通は6月25日の株主総会で、社外取締役として東京大学大学院総合文化研究科教授の古城佳子氏を選出した。古城氏は国際政治のエキスパート。田中達也社長は「SDGsの取り組みに関する助言を期待している」と紹介した。同社の2017年の海外売り上げ比率は36.5%で、将来は50%以上を目指している。SDGsの取り組みを海外事業の拡大につなげたい考えだ。

 株主が、株主総会を通じて企業のESG経営を後押ししはじめた。

[日経産業新聞2018年9月7日付]

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