2018年11月16日(金)

春秋

2018/9/5 1:11
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「大学は出たけれど」は、昭和4年(1929年)に公開された小津安二郎監督の作品だ。昭和恐慌のさなか、就活に奔走する大学卒業者の姿をコメディー調で描く。完全なフィルムは現存しないが、残ったシナリオを読むと案外、世間が変わっていないことに気づく。

▼主人公の若者は、紹介状を携えて面接に臨んだ会社で、「残念ながら欠員はない。受付の仕事なら空きがある」と告げられる。「僕は大学を出ました」と憤然として立ち去る。だが、故郷の母と婚約者には、無職であることを打ち明けられない。「大学は出たけれど」は、今日に至るまで、不況の際に繰り返される言葉だ。

▼経団連の中西宏明会長が、2021年春以降に入社する学生の採用ルールを廃止する可能性について言及した。面接などの時期を決めるルールは、解禁破りの横行で形骸化している。大学の将来像を議論する国の審議会でも、新卒一括採用が大学のブランド偏重を助長し、学生の「質の低下」を招いた、との指摘があった。

▼難波功士さんの著書「就活の社会史」を読むと戦前と現代の就活の「変わらなさ」を痛感する。1937年に東京帝国大が学生向けに作成した「就職の栞(しおり)」いわく、「志望の理由が茫漠(ぼうばく)としており、事業内容について認識不足である者には当然その熱意や適性が疑われる」。何をどう変えるのか、の議論は必要なのだろう。

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