2018年9月25日(火)

中西氏の問題提起受け就活論議を深めよ

社説
2018/9/5付
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 経団連が就職活動の日程で設けているルールについて、中西宏明会長が2021年春入社の学生から廃止する意向を示した。特定の時期に集中的に学生を選考する「新卒一括」に偏った採用は時代遅れなのに、ルールがあるため温存されているとの考えからだ。

 その問題意識は理解できる。就活をめぐる論議に一石を投じたといえる。ただし、学生の多くが就活の進め方の目安にしてきた経団連ルールがなくなることで、混乱を招く可能性は高い。経団連は大学や文部科学省などと就活のあり方について議論を尽くすべきだ。

 経団連は採用活動の開始時期を指針として定める。現在、説明会は大学3年の3月、面接などの選考活動は4年の6月としている。

 学業への悪影響や就活の長期化が問題となるたびに時期は動いてきたが、解禁の時点を決め、企業に横並びの採用活動を促してきたところは長年変わっていない。それが新卒一括採用と表裏一体の仕組みだからだ。

 採用活動の時期を示すことで、大勢の学生を説明会や選考の場に呼び込んで一定の質の新卒者を確保する。一斉に内定を出すことで採用のコストも抑えられる。

 こうした効率的な新卒一括採用が、他社の経験のない若者を自前で長期的に育てるという日本企業の慣行の土台になってきた。

 だがグローバル化やデジタル化が進み、企業は人材を外部にも柔軟に求める必要性が高まっている。環境変化に合わせ採用活動も見直すべきだとする中西氏の考えは理にかなっている面がある。

 慎重に見極めたいのは、経団連が日程ルールを撤廃した場合に学生が受ける影響だ。

 採用選考の前倒しに拍車がかかり、就活がさらに早くから本格化する可能性がある。人手不足で以前より内定をとりやすいとはいえ、学業への影響が懸念される。一括採用が新卒者の雇用安定につながっているとの指摘もあり、その反動も考えた方がいいだろう。

 一方で通年型の採用が浸透し、学生の能力や適性をよく見定める企業が増えれば、採用のミスマッチが減って早期の離職を防ぎやすくなることも期待できよう。

 学生と企業の利害を総合的に考慮して就活のあり方を考えるのは容易ではない。多面的かつ丁寧に議論を積み重ねるしかないだろう。中西氏の問題提起を一つのきっかけとすべきだ。

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