意識調査 社員の不満把握
新風シリコンバレー ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長 ロッシェル・カップ氏
シリコンバレーの企業にとって従業員が仕事と会社に満足しているかどうかというのはとても大切だ。
大きな理由はハイテクビジネスに必要な高等なスキルを持っている人(例えば専門性を有するコンピュータープログラマー)はとても限られており、優秀な労働力を引き寄せて定着させるための企業間の競争は非常に激しいからだ。せっかく採用した従業員が満足していなければ、すぐに他の企業へ流出してしまう。

シリコンバレーの企業の生き残りに不可欠なイノベーションを作り出しているのはまさに知的労働者。彼らが不満を持っていると仕事への取り組みや想像力に悪影響を与える。データ分析に熱心なシリコンバレーの企業は、従業員の満足度に関するデータも一生懸命に集めて分析している。そして、その情報に基づいて具体的なアクションをとっている。
情報収集の一つの方法はマネジャーの360度評価だ。世論調査によると、人が会社を辞める最大の理由は上司との関係の悪化のようだ。マネジャーが効果的でなければチームが最大の結果を出せるはずはないので、シリコンバレーの企業はマネジャーの振る舞いを非常に気にしている。
米グーグルは毎年、部下が自分の直属の上司を評価する「アップワード・フィードバック・サーベイ」を年2回実施している。従業員は無記名で13の質問への回答を記入し、結果がレポートの形でまとまって上司に渡される。その結果は上司の正式な評価や報酬の決断を直接左右するものではないが、上司の自己啓発のための参考に使われる。多くのマネジャーは結果に関してチームと会話をして、一緒に改善策を探る。多くの企業の人事部は360度調査で特に低い評価を受けたマネジャーにコーチングをし、改善を促す。
情報収集のもう一つの方法は従業員の満足度をチェックするアンケートだ。職場の人間関係や仕事の内容、会社全体への思いなどを徹底的に聞かれる。普通は年1回実施される。
私が最近手伝ったあるシリコンバレーの会社は得られた洞察に基づき、職場の改善策を実施し、そうすることで従業員の不満が大きくなって離職してしまうのを予防しようとしている。
シリコンバレーではスピードが勝負なので、より頻繁に従業員の意識をチェックする方法がはやっている。これは「パルスサーベイ」と呼ばれ、毎週、すぐに答えられる内容に絞った質問を従業員に投げかける。そのためのツールとして、グリント、カルチャーアンプ、タイニーパルスなどが人気を得ている。最近登場したAttunedは個人のモチベーションに関する質問を従業員に聞き、それに基づいて離職のリスクを予測する。リンクトイン、インテュイット、イーベイなどがこういったツールで従業員のムードの動きをいち早くつかんで彼らの人事管理方法を日々磨いている。
日本企業も従業員の声に耳をもっと傾ければ、優秀な人材を引き寄せて定着させ、彼らをモチベートする能力を向上できるだろう。
[日経産業新聞2018年9月4日付]