2018年9月26日(水)

障害者雇用の軽視が生んだ水増し問題

社説
2018/8/30付
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 障害者の自立を支援する政策への信頼を失墜させかねない問題だ。率先して障害者雇用に取り組むべき立場にある中央省庁や自治体が、その雇用者数の割合を水増ししていた。中央省庁が不適切に算入していた人数は昨年6月時点で3460人にのぼる。

 障害者が働く場を広げる政策が形ばかりではないのかと疑われてもやむを得ない。問題が起きた背景を明らかにし、早急に再発防止へ動く必要がある。どうすれば障害者を受け入れる職場を広げられるか、考える機会としたい。

 公的機関や民間企業は障害者雇用促進法により、一定割合以上の障害者を雇うよう義務づけられている。その雇用率は国や自治体が2.5%(今年3月末までは2.3%)、民間企業が2.2%(同2.0%)と定められ、算入する対象者は原則、身体障害者手帳などを持つ人としている。

 だが、多くの省庁や自治体が、障害者手帳の交付のない軽度の人など対象外のケースを雇用数に含めていた。国の行政機関の雇用率は昨年6月で2.49%と公表されていたが、実際は1.19%と法定雇用率を大きく下回っていた。

 ハンディを乗り越え自立しようと努力する人たちに対し、無神経な対応といわざるを得ない。障害者雇用の軽視が露呈した格好だ。

 一定以上の規模の企業は法定雇用率を満たさない場合、不足人数について1人あたり月5万円の納付金が課される。しかし行政機関はペナルティーがない。障害者支援への真摯な取り組みが求められていることを自覚すべきだ。

 現状では障害者雇用は、民間企業を含め、「一般事務の仕事ができる軽度の身体障害者」を雇おうとする傾向が強い。

 もっと幅広く、障害がある人を受け入れる姿勢が求められる。短時間勤務や在宅勤務の制度を設けるなど、働く時間や場所を柔軟に選べるようにするのも一案だ。

 業務の流れを職場に張り出すなどで「見える化」し、不安やストレスを減らして、より多くの障害者を受け入れることができる職場環境をつくるべきだ。職場への定着率の向上にもつながる。

 英国のように法定雇用率を撤廃し、障害者の実情に合った仕事の提供を進めて雇用を促進している国もある。法定雇用率を満たすことが目的化してしまってはおかしい。障害者が働きやすい職場づくりを多面的に考えるべきだ。

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