2018年9月23日(日)

春秋

春秋
2018/8/29付
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 「さくら先生の将来の夢は?」。作者が30歳の頃、読者の質問にこう答えた。「76歳くらいまで元気でチャキチャキ生きて、孫や近所の子供たちから『おばあちゃんが世界でいちばん大好き』と言われることです。かきつづけるよ」。老いたまる子のイラストを添えて。

▼53歳の若さだった。国民的な人気漫画「ちびまる子ちゃん」を生んださくらももこさんが平成の終わりに旅立った。1970年代半ば。静岡県で暮らす小学3年生のまる子は、作者の分身だ。作品の主題が近過去に対するノスタルジーであることは間違いない。だが、それは昔をことさら美化する懐古趣味とは少し異なる。

▼例えば、姉とのケンカに負けたまる子の「いまにみてらっしゃい」という発言に、作者は地の文でこう論評する。「何をみせてくれるんだか。負け犬の捨てゼリフというのは不可解である」。アニメでは男性のどこか投げやりなナレーションが挿入される場面だ。回想形式の健やかな自己批判が物語に奥行きを与えている。

▼北海道大の玄武岩准教授に、「東アジアにおける『ちびまる子ちゃん』の家族像」という論文がある。中国のアニメ視聴者に印象深いシーンを尋ねると、「おじいさんにおねだりする」が上位を占めた。祖父に対する「甘え」への郷愁に、核家族化の影響をみる。日本を含む東アジア社会が失ったものと響き合うのだろう。

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