2018年11月16日(金)

持続的に防衛力を高めていくには

2018/8/26 23:21
保存
共有
印刷
その他

米朝合意によって小康状態にあるとはいえ、東アジアの安全保障環境が不安定なことに変わりはない。日本の防衛力を一段と高めねばならないが、やみくもに背伸びをしても長続きできなければ意味がない。どうすれば有効な防衛体制を築けるだろうか。

安倍政権は今年末、防衛政策の指針となる「防衛計画の大綱」を5年ぶりに見直すとともに、2019年度から5年間の防衛費の総額を定める新しい中期防衛力整備計画を策定する方針だ。かなり大きな節目であり、中長期的な視野が求められる。

甘すぎる装備見積もり

前回の大綱改定は、縦割りになりがちだった陸海空の各自衛隊の統合運用を明確にした。今回のキーワードは「クロス・ドメイン」である。宇宙やサイバーなど、新たな領域(ドメイン)での脅威に多次元横断で対応できる防衛体制づくりを打ち出す。

米国は陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊に加え、宇宙軍の新設を検討中だ。同盟強化の観点からも、米軍と自衛隊の連携に支障が起きないよう、日本としても早めに勉強はしておきたい。

今後の防衛力整備で重要になるのが、ミサイル攻撃への対処だ。政府は昨年、陸上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」や巡航ミサイル「JSM」の導入を決めた。

米朝融和が進むとみて、導入の中止を主張する向きがある。どこからミサイルを撃ち込まれても対処できるシステムの構築は、憲法が認める「専守防衛」に沿うものである。安保環境の少々の変動で左右されるべきではない。

ただ、調達の仕方はよく考えた方がよい。昨年のいまごろ、防衛省はイージス・アショア1基あたり800億円程度が必要になると説明していた。ところが、導入を決めたら、1基1340億円かかると言い始めた。

予算が成立すると急に増額が必要になるのは公共事業にありがちな話だが、ここまでの値上がりは極めて異例だ。見積もりが甘かったのではないか。

1隻あたり1700億円程度かかるイージス艦を増やすより陸上配備型の方が安上がり、というのがイージス・アショア導入のうたい文句だった。日本本土から遠くで迎撃するほど被害を小さくできるのだから、値段にさほど差がないならばイージス艦を買い増す選択肢もあり得た。

本当に1340億円もかかるのか、再度の増額もあり得るのか、など、きちんとした説明なしに先に進むのは納得できない。

日本は主な防衛装備をほぼ自動的に米国から買うため、価格交渉力がほとんどない。日米同盟にひびを入れるわけにいかない事情はわかるが、同じような立場にある台湾でさえ、フランス製の戦闘機を買っている。

政府は防衛費を今年度の約5兆2000億円から来年度は約5兆3000億円に増やす方針だが、高値づかみが続けば増額分などすぐに消えてしまう。

同時に陸自にかたよった編成の見直しも必要だ。日本本土に上陸する敵軍を地上戦で迎え撃つ戦争はもはや想定しにくい。新規装備を買う前にスクラップ・アンド・ビルドを徹底すべきだ。

専守防衛の再定義を

国内総生産(GDP)比で1%未満の日本の防衛費を将来どこまで増やすのかについても、真剣な議論をすべきときだ。

米国は欧州の同盟国に軍事費をGDP比4%にするよう求めており、この傾向はトランプ政権かどうかにかかわらず続くだろう。自民党が5月に防衛費を2倍にするように提言したのは、こうした事情を踏まえたものだ。

では、どこまで増やすのか。毎年8%を上回るペースで国防費を増やす中国と軍拡競争をするのはあまり現実的ではない。中曽根康弘元首相が主宰するシンクタンクが昨年、「当面はGDP比1.2%」を提唱したが、そのあたりが落としどころだろう。

防衛費以外にも課題は山積みである。ミサイル防衛が最重要になった現在に合致した「専守防衛の概念」の再定義も早めに検討しておきたい。

歴代内閣は敵国のミサイル発射基地への攻撃は合憲とする一方、航空母艦を保持するのは違憲としてきた。イージス艦からの迎撃はよくて、空母艦載機での迎撃はなぜいけないのか。

戦争の形態は時代によって変わる。自衛隊は何ができて何ができないのかを平時にきちんと詰めておくことが大事だ。

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報