2018年11月15日(木)

次のG20で気候変動 議論 議長国 日本の手腕に期待
Earth新潮流 三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚氏

地球の読み方
コラム(ビジネス)
2018/8/27 6:30
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米トランプ政権がパリ協定離脱を宣言するなど国際政治の不確実性をよそに、エネルギー・資源、IT(情報技術)など多くの企業が二酸化炭素(CO2)関連の規制強化を重要な経営リスクと認識し、長期的な視点で経営戦略見直しに取り組んでいる。リーマン・ショック後の景気後退により、気候変動問題の取り組みが一気にしぼんだ10年前とは大きな違いだ。

企業が戦略作りで悩むのは、CO2の規制は企業がコントロールできるものではなく、政策変更の時期や内容も予測するのが難しいことだ。

参考になるのは、各国政策の先行指標とも言える国際枠組みの議論だ。ただ、国際枠組みと言えばパリ協定が思い浮かぶよう、190カ国以上が議論に参加するため合意には時間がかかる。

そこで注目したいのが、米、欧州連合(EU)、日本など先進国に加え、中国やインド、産油国などCO2の大排出国、韓国やメキシコなど新興国が参加し、毎年持ち回りで開催される20カ国・地域(G20)の一連の会議だ。

G20は世界の国内総生産(GDP)の約8割を占め、影響力が大きく、参加国が少ないため議論がしやすい。2019年のG20は、2020年の気候変動枠組み条約会議(COP)のいわば前哨戦。19年のG20議長国日本が準備するメッセージは注目を集めそうだ。

民間から期待が高いのは、パリ協定の目標を踏まえた具体的な道筋だろう。省エネルギーや再生エネを否定する人はいないが、欲しいのはその先にある課題についてのメッセージ。再生エネをさらに活用するための電力市場改革や、電力系統管理システムの強化、森林開発を通じたCO2放出を減らす仕組みづくり、また、二酸化炭素地下貯留(CCS)を使った低炭素化石燃料の流通整備などが考えられる。

また、CO2削減を進めても一定の気候変動は避けられないことから、農業やインフラ、サプライチェーンの強化も欠かせないだろう。各国がやりたいことを寄せ集めるだけでなく、必要とされる対策を包括的に描いたグランドデザインだ。

気になるのはこうした取り組みを後押しする政策手法だ。これまで巨額の金融支援パッケージが何度となく登場したが、財源には限りがある。カネの切れ目がCO2削減の終わりでは持続的とは言えない。CO2排出規制を整備し、補助金に頼らない恒久的な市場が出来れば企業は歓迎だ。

必要なのは、補助金よりも市場だ。補助金や金融支援もあると助かるが、これらは構造改革の痛みを和らげるために活用する財源との発想転換があってもいいだろう。

京都議定書やパリ協定などで欠けているのは国際競争の視点だ。国際投資や貿易は活発で、資源や製品を通じてCO2は日々、国境を越えて移動している。「不十分なCO2政策は輸出補助金ではないか」と指摘する世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)の専門家もいる。企業が公平な競争環境を求めるのは当然で、貿易・投資立国の日本にとって保護主義の台頭は避けたい。

将来の人口減少や日本経済の相対的な縮小を踏まえると、「米国やEUが知恵を出し、日本がカネを出す」といった発想からの脱却が欠かせない。「補助金に頼らず、競争を通じてCO2削減が進む経済システムづくり」を新しい日本の国際貢献として提案できれば、企業にとって重要なメッセージとなる。G20首脳会議(サミット)あと1年を切った。気候変動対策は日本の外交と経済政策、そして企業戦略の転機になるかもしれない。

[日経産業新聞2018年8月24日付]

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