2018年11月17日(土)

サマータイムの拙速な導入は避けよう

2018/8/22 23:05
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夏に時計の針を1~2時間進める「サマータイム(夏時間)制度」の是非を検討するよう、安倍晋三首相が自民党に指示した。2020年の東京五輪・パラリンピックの暑さ対策が目的だが、準備期間の短さなどに懸念の声も多い。拙速な導入は避け、コストと効果をきちんと見極めたい。

夏時間の導入は五輪の大会組織委員会が安倍首相に要請した。マラソンなどの競技を涼しい時間帯に始められるのが利点だという。大会前年の試行を含め、19年と20年の期間限定で実施することを想定し、今年秋の臨時国会への法案提出を目指している。

法案が成立した場合、準備期間は半年程度しかない。まず懸念されるのはコンピューターシステムの対応だ。深夜時間帯の自動データ処理など、見えない「時計」で動くシステムは多い。皆が手作業でパソコンの時刻設定を変えればよい、といった話ではない。

やはり大がかりなシステム上の変更が必要となった「2000年問題」の場合、金融業界は前年半ばにはシステム修正をほぼ終え、点検段階に入った。米マイクロソフトも夏時間などへのシステム変更には1年以上かけるようウェブサイトで助言している。

また、全競技を夏時間で開くとなると、夕方開催の競技は逆に予定より暑い中で開くことになりかねない。日本全体の時間を変えるより、一つ一つの競技の開始時間を見直す方が着実ではないか。

そのうえで、日本に夏時間を導入するかどうかについては、時間をかけて得失を検討したい。

夏時間は欧米など約70カ国で実施している。夕刻以降も明るい時間が続き、家族での外出や余暇活動にあてやすいといった利点がある。過去数十年間の内閣府などの世論調査でも賛成が反対を上回っており、人々の関心は高い。

一方、生活時間の変更による健康面のリスクも指摘されている。照明の省エネ効果も発光ダイオード(LED)機器の普及で薄れ、冷房用電力の需要は夏時間でもあまり減らないとの試算もある。外出の増加による小売業の売り上げ増加も、ネット通販の普及でかつてほど期待はできないらしい。

まだ日が高い中で「終業時刻だから」と帰るには企業風土の変革も要るだろう。国民生活やビジネスに広く影響する夏時間の導入には、データや実例に基づく多面的できめ細かい議論が必要になる。

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