2018年11月15日(木)

アナン氏が問う国連の役割

2018/8/22 0:20
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自国優先主義が幅をきかせ多国間体制が揺らぐ世界で、国連はどんな役割を果たせるのか。

18日に死去したコフィ・アナン元国連事務総長は、国際協調体制の柱としてグローバルな課題に取り組む国連が持つ可能性と限界の両面を示したリーダーだった。

アナン氏が事務総長を務めた1997年からの10年間は、東西冷戦終結後の国際秩序への模索が続くなか、世界各地の紛争やテロ、貧困、人権、環境、感染症などへの対応が、国際社会全体の課題として注目された時期にあたる。

国連職員出身で初めて事務総長になったアナン氏は改革を意欲的に進めた。途上国の貧困削減などでは、国連がまとめた「ミレニアム開発目標」(MDGs)を推進。民間企業の役割に着目し、人権や環境分野への対応を促す「グローバル・コンパクト」の考え方も提唱した。

これらはいま国連が30年までの達成を訴える「持続可能な開発目標」(SDGs)につながるものだ。対テロやエイズ対策にも注力し、「国連に新しい生命を吹き込んだ」として01年に国連とともにノーベル平和賞を受賞している。

国連平和維持活動(PKO)では、ルワンダやボスニア・ヘルツェゴビナの大量虐殺事件の教訓などを背景に、市民を「保護する責任」を加盟国に訴えた。

一方、アナン氏を悩ませたのが、03年のイラク戦争に突き進む米国の一方的な姿勢だった。国連安保理の承認がない武力行使に反対したが、当時のブッシュ米政権を止めることはできなかった。

国連は現在、多国間主義に冷淡なトランプ米大統領に手を焼いている。アナン氏が設立に貢献した国連人権理事会からも米国は脱退する方針を表明している。

安全保障問題から気候変動、貧困と格差といった難問に対処するうえで国連は引き続き重要な枠組みだ。だが、加盟国の協力がなければ機能しない。アナン氏の残した遺産と教訓をどう生かすか、国際社会は厳しく問われている。

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