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スクーター 投資過熱

新風シリコンバレー コア・ベンチャーズ・グループジェネラルパートナー ジョアナ・ドレイク氏

2017年には米国のライムやバード、スクートなどが多額の資金を調達し、スクーターがシェアリングのエコシステムに加わった。今春には数千台ものスクーターがサンフランシスコの歩道に現れた。この市場には3つの特徴があり、それぞれが組み合わされて異例の状況を形成している。

(1)大量のローテクスクーターが最小限のプラニングとコントロールで急速に普及(2)コミュニティーの激しい反発と行政から即座に出た規制(3)非独占的な資産ベースの企業が異例の株価収益率で多額の資金を調達できたことに対する投資コミュニティーの割れた反応――だ。

シェアスクーターベンチャーの成長は、密集した交通量の多い都市部でオンデマンドで低料金の交通手段への欲求が満たされていない事実を浮き彫りにしている。

しかしこの乗り物はたちどころに歩道にあふれ、未熟な乗り手が他の歩行者や自転車、そして自分たちにも危険をもたらし続けている。分析によると、メンテナンスのための回収や充電が頻繁に必要なため、地球に優しくなく、当初考えられていたほど持続性のある代替案でもないことが示されている。

サンフランシスコでは念入りに調査したうえで規定した一部のサービス以外を禁じている。市の関係者はサービスを慎重にコントロールし、地元に確実に貢献するプログラムを開発中だ。

無数の利害関係者が出てくるなかで、投資家の反応は様々だ。有数の規模を誇り知名度も高いベンチャーキャピタルは次のウーバーテクノロジーズやリフトのようなチャンスを逃したくないと、シェアスクーターの企業に大規模に投資している。だが成功するのはわずか2~3社だと思われ、スクーター戦争に絡む多額の損失を警戒しているところもある。異例に大きい資金調達額やそれに関連した評価に見合うだけの需要が、一部の適度に密集した都市部以外にあるかどうかを疑問視する向きもある。

スクーターの開発競争では「二重価格市場」の発展性への視点も重要だ。1つはウーバーの車両やエアビーアンドビーの住居のような固定費を「変動化」できる市場、2つ目は顧客がコモディティーサービスをその場で利用できる市場だ。

ウーバーやリフトはローカルコミュニティーを越えた普及には至っていないものの、食品から小包の配達まで新しいローカルサービスを売る中核能力は身に付けた。スクーターのようなシェアリングエコノミーの周辺市場の企業は、シェアリングサービスの既存企業の傘下に入ることが最良のビジネスモデルかもしれない。

新規に参入した企業が規模を拡大する前に既存の企業がM&A(合併・買収)を実施できれば買収価格も理にかなうだろう。だが数十億ドル規模と評価される現行のシェアスクーター各社は妥当な買収価格はすでに超えている。既存の企業は自社独自のサービスを開発することを検討しているかもしれない。

[日経産業新聞2018年8月21日付]

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