2018年9月26日(水)

国際機関に貢献し多国間主義守れ

2018/8/19 23:09
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 国家資本主義で高成長をとげた中国の台頭、米国第一主義を掲げて2国間のディールにまい進するトランプ大統領。既存の国際経済秩序が揺らぐなかで、第2次大戦後の屋台骨だった国際機関も転機にある。日本は多国間主義の秩序の維持・発展のため、これまで以上に国際機関に貢献し、発言権の確保に努めるべきだ。

新興国の台頭で激変

 日本の戦後の発展は国際機関とともにあったといってもよい。敗戦から7年後の1952年、国際通貨基金(IMF)・世界銀行に加盟。世銀融資は戦後のインフラ復興を支えた。日本は、世界貿易機関(WTO)の前身の関税貿易一般協定(GATT)による自由貿易体制の恩恵を享受した。

 東京五輪が開かれた64年には、先進国クラブと言われる経済協力開発機構(OECD)に加盟し、国際機関の支援の受け手から支え手にまわった。高まる経済力を背景に、国連分担金や、IMF・世銀の出資の比率は米国に次ぐ世界2位に浮上した。

 IMF・世銀中心のブレトンウッズ体制と呼ばれる秩序は、71年のニクソン・ショックや2度の石油危機、東西冷戦終結など情勢変化に対応しつつ大枠は維持された。国際機関を補完する協調の場として主要国首脳会議(G7サミット)も創設された。

 冷戦終結後、旧ソ連・東欧や中国はIMF・世銀に加盟し市場経済移行の支援を受けた。2001年のWTO加盟を機に中国は「世界の工場」として飛躍をとげた。

 中国など新興国の台頭は、西側先進国主導の国際秩序を揺さぶり始めた。中国はIMF・世銀での発言権拡大を求め、出資比率は米国、日本に次ぐ3位に浮上した。次回増資では日本を抜き2位になる見通しだ。中国は独自の新秩序づくりも模索する。アジアインフラ投資銀行や一帯一路もその一環といえる。

 冷戦終結直後は中国やロシアを国際秩序に取り込めば、経済改革とともに民主化も進むという期待があった。ところが中国はグローバル化の恩恵で高成長をとげたが、民主化は進まなかった。ロシアもプーチン大統領の独裁が進み、強権的な国家資本主義の国が力を増した。米国で多国間主義への疑念がわき、トランプ氏が米国第一主義を唱える遠因になった。

 こうした情勢下で日本はどう進むべきか。天然資源に乏しく貿易や対外投資で稼ぐ日本には、開かれたグローバル経済が欠かせない。その基盤になる多国間主義と国際機関の強化に貢献すべきだ。成長著しい中国、インドに資金力で対抗するには限界があるなかで、日本に大事なことは3点ある。

 第1は構想力だ。資金力ではなく政策プランなど知恵で勝負する力を磨きたい。例えばアジアなどの新興国のインフラ投資。中国主導の構想に警戒感もあるなかで、世界が納得できる多国間の枠組みを提案できないか。英仏など欧州の国は、日本より経済規模は小さいが、政策立案や議題設定の能力には一日の長がある。

カネよりも知恵で勝負

 第2は人的貢献だ。国連、IMF、世銀など国際機関で働く日本人には大別して2種類がある。外務省、財務省などからの期限つきの出向者と、プロパー職員だ。今後増やしたいのは、国際機関に長く勤め幹部になる職員だ。

 政府も日本人の国際機関への就職支援を進めているが課題も多い。例えばIMFでは、幹部職員になるには経済学博士号を持っていることが望ましいが、日本にはそうした志望者が少ない。国際機関で勤めた後に日本に帰っても、国内の労働市場が硬直的で就職の門戸が狭いという問題もある。

 第3は仲間作りだ。この点でも欧州の例は参考になる。欧州連合(EU)やユーロ圏の発足で、一国では小さい国々も1つにまとまり国際社会で発言力を確保した。アジアがEUのようになる可能性は低いが、日本は東南アジアなどで連携する仲間を増やしたい。

 貿易戦争や反グローバル化の機運が広がるなかで、世界経済秩序の再構築は喫緊の課題だ。日本は来年、主要な先進国と新興国が顔をそろえる20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国になる。6月には大阪で首脳会議を開く。機能不全が指摘されて久しいG20会議だが、多国間主義の再生に日本が指導力を発揮する好機としたい。

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