2018年11月15日(木)

次代担う人材育成を「エドテック」で

2018/8/17 23:12
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身の回りのデータ利用が広がるなか、教育が様変わりしている。オンライン講座など学びの機会が飛躍的に増え、ビッグデータを生かして効率的に教える手法の開発も進む。教育と技術が融合した「エドテック」がけん引役だ。

この分野で日本は出遅れている。学校教育が学習指導要領で縛られ、新技術の活用を阻んできたためだ。教育に企業などの参入を促し、エドテックを上手に使って次代を担う人材を育てたい。

ムークが変えた教室

パソコン、インターネットに続いてビッグデータが社会の基盤となる「データ社会3.0」。教育分野でそれをもたらしたのがオンライン講座の急速な普及だ。

米スタンフォード大学などは2012年、世界の有力大の授業をネットで配信する「大規模公開オンライン講座(ムーク)」を開講し、いまでは計5千万人以上の受講者を集める。米国の非営利組織カーンアカデミーは小中高生向けに無料で授業を配信している。各国語サイトの開設も相次ぐ。

オンライン講座は学習の機会を広げただけではなく、学校の役割も変えた。「知識の習得はネットで、討論などで思考力を培うのは教室で」と。

ネットでは、受講者がどの程度の時間で理解したか、どこでつまずいたか、といったビッグデータを集められる。これを分析して効率的な指導法を開発したり、学生が脱落するのを防いだりする取り組みも、広がり始めた。

日本ではベンチャー企業のCOMPASS(コンパス、東京・品川)が、算数・数学で生徒がつまずいた項目を分析し学習時間を大幅に短縮できる技術を開発した。これを組み込んだタブレットを学習塾大手や岡山県、東京都の公立校が採用し始めている。

こうした変革やそのスピードの速さを、まず教育関係者が正しく理解することが大切だ。そのうえで、変化に機敏に対応していくことが求められる。

学ぶ側も新しい技術を上手に活用する必要がある。これまでの教育では教師が主導権を握ってきたが、エドテックの広がりで「学習者が主役になる」との期待が膨らんでいる。

例えば、米国では常に数千以上の講座がネット配信され、人工知能(AI)やフィンテックなど最先端の授業も毎週のように開講している。受講者は受けたい授業を選択し、自分でカリキュラムを組み立てられる。

注目されるのが、仮想通貨の基盤技術でもあるブロックチェーンの活用だ。受講記録を追跡でき改ざんができないため、個人の学習歴を客観的に示す「台帳」になる。「学校の卒業証書より、何を学んできたかが重視される時代が来る」とみる専門家は多い。

日本では、学習塾や予備校でIT(情報技術)の活用が進んだ半面、学校教育は後れをとった。

大きな理由のひとつは、ITをよく理解している教員が少ないことだ。文部科学省は20年度から小学校でプログラミング教育を必修にするが、教える側の知識不足をどう補うかは深刻な課題だ。

企業の参入をもっと

学習内容を細かく規定する指導要領もITの普及を想定してこなかった。公立校のパソコンなど情報機器をクラウドサービスに接続することを条例で禁じている自治体が多く、こういった規制もエドテックの活用を阻んできた。

安倍政権は「人生100年時代」を見据えて社会人の学び直しを拡充する方針を掲げている。ばらまきに終わらないよう、何をめざしどこに重点を置くのか、首相の諮問機関である教育再生実行会議などで明確にすべきだ。

教育界にとどまらない、外部の視点や知恵を取り入れる必要もある。経済産業省は「未来の教室」と名づけた実証事業を始めた。ITや人材開発、福祉など幅広い業種の企業と学校を連携させ、エドテックのモデルを探るという。

教育を文科省だけに任せず、ITを所管する総務省なども含め政策を競い合うことは、状況を打開する糸口になるだろう。

政府の予測によれば、ITを担う人材は30年時点で最大約80万人不足する恐れがある。エドテックを広めることで、狭い意味のIT人材の養成にとどまらず、データ社会の担い手となる人材の層を厚くしたい。

(おわり)

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