2018年9月19日(水)

「考える組織」が生産性を高める

2018/8/16 23:12
保存
共有
印刷
その他

 パソコンの登場、インターネットの普及で伸びた情報量は、第3の画期であるビッグデータ時代、さらに増大する。「データ社会3.0」は生産性の向上を遅れていた分野でも進める好機だ。

 企業のデータ活用はこれまでも生産や品質の管理などでみられたが、ものづくり以外にも広げなければならない。終身雇用や年功制の見直しに伴い急務のホワイトカラーの生産性改善にも、積極的に手を打つときにきている。

仮説が改革の出発点

 まず企業に求められるのは、データを活用して何をしたいのか、目的をはっきりさせることだ。

 日本総合研究所などが栃木県茂木町で進めている農業の生産性向上の実験では、どんな品質の農産物を、いつ、どれだけ収穫するかという目標を定める。そして自動走行ロボットが収集する生育状況などのデータから、日々、どのような作業が必要かを導き出す。

 目的を明確にすることで、意味のあるデータを集めることができる。土壌の成分や日照、風速など幅広く収集し、「分析項目を新たに考え出すことも重要になる」(木通秀樹・日本総研シニアスペシャリスト)。農業に参入する企業には、収益拡大という最終目的に照らし、必要なデータを取捨選択する力が求められる。

 気候変動で農産物は安定的な収穫がしにくくなっており、「データ農業」の意義は増す。人手不足が深刻な流通・サービス業も、無駄のない配送ルートの考案など、具体的なターゲットを設定してデータ活用に力を入れるべきだ。

 効果的な改革をするには、問題の根にあるものは何か、仮説を持つことが重要になる。的確にデータを集めるためにも欠かせない。

 グローバル競争の激化で急がねばならない組織の生産性向上では、それを阻むものが企業により異なることが多く、データ分析の際の着眼点がとりわけ問われる。

 企業に人事データの活用を指導する大湾秀雄・早大教授は、低下傾向にあった社内の各プロジェクトの粗利益率改善に取り組んだ企業の事例を挙げる。経営者に、プロジェクトリーダーの問題が大きいのではないか、との意識があったため、データ分析で成果をあげることができたという。

 仮説があったから、各リーダーの時間の使い方を2週間にわたって調べるという方法をとることができた。実績をあげているリーダーは、計画性、コミュニケーション力や、早めの方針決定・早めの調整という3つの要素を備えていることが判明。結果をこの企業はリーダー養成に活用している。

 データ活用による改革を広げるには、現状の何を見直すべきか、社員一人ひとりが問題意識を持っている必要がある。「経営者は会社が抱える課題について、日ごろから社員に考えさせる努力が求められる」と大湾氏は指摘する。

 組織面ではデータ分析の専門部署を設ける手もあるが、業務改革が進みやすくする工夫が要る。

 大阪ガスでは専門組織「ビジネスアナリシスセンター」が設備メンテナンスの進め方などについてデータ分析をする際に、担当の事業部門が対価を支払う。

個人情報保護に責任

 「スポンサーシップ制度」といい、事業部門にコスト意識を持たせることで業務の改善を促す仕組みだ。データ分析は実際の改革につながって初めて意味を持つとの認識を共有することが大切だ。

 経営改革を迅速に進めるには、企業が持つ様々なデータやIT(情報技術)投資を統括する最高情報責任者(CIO)とトップが意思疎通を密にする必要がある。

 だが電子情報技術産業協会などの調査では、CIOを最高経営責任者(CEO)の直属としている日本企業は4割に満たず、9割を超える米企業との差は大きい。指揮系統の見直しも課題になる。

 企業が付加価値の高い製品やサービスを生み出すには、消費者や高齢者など社員以外のデータも集めることが必要になる。しかし、ドイツの調査会社によれば、個人データの提供に前向きな人の割合は中国の38%、米国の25%に対し、日本は8%にとどまる。

 個人情報を扱う企業には、データの保護に重い責任を負うことへの自覚が求められる。情報管理を徹底することで、社会の信頼が得られ、それが扱えるデータの増加と企業の成長につながる。

秋割実施中!日経Wプランが12月末までお得!

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報