2018年11月15日(木)

踏み込み足りぬ廃炉技術戦略

2018/8/9 23:03
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東京電力福島第1原子力発電所の廃炉へ向け、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が新しい「技術戦略プラン」の要旨を公表した。溶融核燃料(デブリ)の取り出し準備を、調査と並行して丁寧に進める方針は評価できる。

ただ、汚染水の処理など議論を呼びそうな問題を正面から取り上げていないのは残念だ。

技術戦略プランは政府と東電による廃炉の「中長期ロードマップ」に沿って具体的な技術課題や解決策を示す。廃炉作業の進捗に応じて2015年以降、毎年改訂している。18年版は9月にも詳細な報告書にまとめる。

原発敷地内は広い範囲で放射線リスクが低下した。廃炉作業は最難関のデブリ取り出しの順序や工法を決める「新しい段階に入りつつある」(山名元・理事長)。今回のプランはそうした重要な時期の戦略を示す。

現時点では、デブリの全容はまだほとんど把握できていない。不用意に重機で原子炉内をかき回せば、放射線量や水温が上昇する恐れがある。

スケジュールありきで作業を急ぐのは危険だ。原子炉内を慎重に調査し、デブリの安全な動かし方などを確認しながら、段階を踏んで工法や作業順序を決めるとしたのは妥当といえる。

他方、戦略プランは地域住民の理解を得るのが容易でない事柄には踏み込んでいない。

たとえば、汚染物質の大半を除去した後、約800基のタンクに保管されている水をどう処理するのか。原発の敷地は最終的に放射線リスクがない更地に戻せるのか。いずれも地元の関心は高く復興計画とも絡む問題だ。

経済産業省の委員会などが検討を進めているが、原賠機構も技術的な観点から課題や可能性をわかりやすく示してはどうか。

戦略プランは今回、「地域との共生およびコミュニケーションの一層の強化」の章を設けた。「復興に貢献する廃炉」をめざすとしているが、具体性に欠ける。

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