2018年11月14日(水)

不適切なネット広告の境界線は 協会、倫理基準提示で一石
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2018/8/10付
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NIKKEI MJ

7月末、「広告代理店のグローバルネットがJIAAを退会」という記事をネットメディアの「ねとらぼ」が掲載し、話題になった。

国内最大級の海賊版サイト「漫画村」は4月中旬に見られなくなった

国内最大級の海賊版サイト「漫画村」は4月中旬に見られなくなった

JIAAは日本インタラクティブ広告協会というインターネット広告ビジネスに関わる企業の団体で、一般企業の方は知らない方が多いかもしれない。グローバルネットという会社名を知っている人も少ないだろう。ただ、ネット広告の関係者は知っておいた方がよいニュースと言える。

グローバルネットがJIAAを退会するに至ったきっかけは、漫画村を中心とした海賊版サイト問題だ。

漫画村などの海賊版サイトが、本来有料で販売されている漫画をコピーして自社サイトに違法にアップロードしていることが、大手出版社などからの問題提起によって注目を集めたのだ。

4月には政府が海賊版サイトへのアクセス遮断をインターネット事業者などに要請したことで話題になった。この海賊版サイトが生まれる背景のひとつに、ネット広告があると言われる。

違法でアップロードした漫画によって、多数のユーザーのアクセスを集めれば、そこに広告を表示して収入を上げることができる。ネット上では、ねとらぼを中心に海賊版サイトに出稿している広告主や広告会社への批判が高まっていた。

グローバルネットは、グループ会社がこうした海賊版サイトへの広告出稿に関わっていたのではないかと指摘されていたため、JIAA退会という結果につながった。

ねとらぼによると、グローバルネットはJIAAに「社内の体制を整えて再入会を目指したい」と発言しているとのことだから、現時点では入会資格がないと判断されたと推測できる。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

インターネット広告では、どの企業が高い倫理基準でビジネスをしているのかどうかを、詳しくない企業が見極めるのは難しいと言われている。

海賊版サイトへの広告出稿を率先して実施していたとされる企業グループはJIAAに加盟できない、という事例がひとつできたことになる。広告主からすると朗報と取ることもできるだろう。

JIAAがネット広告の倫理基準の議論で存在感を示したのは、今回が初めてではない。3年前にステマと呼ばれるやらせ記事の問題が大きく注目される過程においても、起点となったのはJIAAが定めた「ネイティブ広告に関するガイドライン」であり、そのガイドラインをJIAAに理事がいるサイバーエージェントが守っていないのではないかという個人投資家の山本一郎氏による問題提起だった。

JIAAがなければ、今もやらせ記事問題は曖昧なまま残っていたかもしれないのだ。

筆者自身、WOMマーケティング協議会という口コミマーケティング組織の立ち上げに携わったことがあり、こういった業界団体の運営や業界の基準作りがいかに難しいかは身をもって体験したことがある人間のため、少し期待しすぎている点があるのは間違いない。

ただ広告主からすると、多数の企業が乱立して真偽のほどが見極めにくいネット広告の世界において、JIAAという協会がひとつの倫理基準の境界線を示してくれるのは、とても大事なことなのではないだろうか。

[日経MJ2018年8月10日付]

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