2018年9月26日(水)

豪雨禍を検証し減災につなげたい

2018/8/6 23:17
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 200人を超す死者を出した西日本豪雨から1カ月。被災地では安否不明者の捜索が続き、避難生活が長期化している。政府や全国の自治体が協力し、被災者の生活再建を急ぎたい。

 被災地では水道などの生活インフラはほぼ復旧したが、避難者は依然として約3600人いる。学校の体育館などでの生活はプライバシーを確保できず、猛暑もあって体調を崩さないかが心配だ。

 損壊した自宅で暮らす「在宅避難者」もいる。全国から看護師や保健師を派遣し、きめ細かに健康状態をチェックしてほしい。

きめ細かな生活再建を

 ひとくちに生活再建といっても被災者が抱える事情は千差万別だ。住宅の補修費の助成、民間住宅を借り上げる「みなし仮設住宅」の提供、二重ローン対策など、様々な支援策を総動員したい。

 被災地では建物の破片や土砂などからなる災害廃棄物が積み上がっている。被災自治体では到底、処理できない量だ。環境省を中心に自治体の枠を超えた広域処理に踏み切るべきだろう。交通インフラなどの復旧を急ぎ、中小企業の事業再開も後押ししたい。

 西日本豪雨はこれまでの局地的な豪雨と異なり、広い範囲で長時間にわたって記録的な雨量をもたらした。被災地の多くは、かつてない珍しい経路をとった台風12号による大雨にも見舞われた。

 堤防が一部で決壊し、1500件を超す土砂災害も発生した。過去10年間の年間平均件数を上回る規模だ。今後の減災につなげるためにも、様々な観点から従来の対策を検証する必要がある。

 まず、災害情報の伝え方だ。気象庁が出す特別警報は「最後通告」の意味合いが強く、そこから避難を始めるのでは遅い。自治体が避難準備情報や避難勧告を出した段階で、住民が行動を始められるように促す仕組みが要る。

 それには、住民に災害リスクを知ってもらうことが大事だ。多くの自治体は洪水や土砂災害の危険度を示したハザードマップを公表しており、パソコンやスマートフォンで見ることができる。自分が住む地域のリスクを認識していれば早めの避難につながるはずだ。

 住民同士の「共助」も強めたい。今回の豪雨災害でも、住民同士が声を掛け合い、早めの避難で全員が無事だった集落があった。

 従来の河川管理計画やダムの緊急時の放流のあり方なども検証すべきだろう。そのうえで、老朽化した堤防やダムの機能強化や排水施設の耐水化などに優先順位をつけて取り組む必要がある。限られた予算をどう使えば効果が上がるのかしっかりと検討してほしい。

 2年前に東北などを襲った台風10号では岩手県岩泉町の川沿いの高齢者施設で死者が出た。西日本豪雨でも倉敷市真備町地区の病院が浸水した。

 災害時に重要な役割を担う施設や高齢者や障害者が入居する施設は、現在の立地が適当か、再検討する必要がある。全国に約53万カ所ある土砂災害の警戒区域では新たな宅地開発を避けるべきだ。

 今回は中山間地域で被害が目立ったものの、都市住民にとっても対岸の火事ではない。同規模の豪雨が関東を襲えば、荒川などが氾濫する恐れがある。そうなれば東京の東部が浸水するだけでなく、大手町や新橋など都心のオフィス街や地下街にも被害は及ぶ。

 「温暖化が進むにつれ豪雨の発生頻度が高まり、規模も大きくなる傾向にある」。日本学術会議と56の学会が7月に出した「西日本豪雨・市民への緊急メッセージ」は冒頭でこう警鐘を鳴らした。

世界各地で異常気象に

 異常気象が目立つのは日本だけではない。世界気象機関によると北半球では今夏、猛暑や干ばつが相次ぎ発生し、欧州の一部では長期化した。温暖化がすべての直接の原因とは言えないが、異常気象が発生しやすい条件を作り出しているとの見方は多い。

 「かつて経験したことがない」豪雨が今後、毎年のように起きる可能性がある。国、自治体、住民一人ひとりがこうした認識を共有し、対策を絶えず見直すべきだ。

 警戒情報を出す気象庁などはもちろん、情報の受け手も警報が出たらどんな行動をとるか、深夜だったらどうするかなど思考実験を習慣づけることが大切だ。

 今後、温暖化によってそれぞれの地域における豪雨や洪水、浸水などのリスクはどれだけ高まるのか。科学的なデータに基づき、より説得力をもって示せれば対策の加速につながるだろう。

 国をあげて、分析とわかりやすい情報提供に取り組んでほしい。

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