2018年12月16日(日)

まずは社内起業家の育成
新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

コラム(ビジネス)
2018/8/7付
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「第4次産業革命」時代における大企業のオープンイノベーションの取り組みや新規事業の育成の重要性は言うまでもない。だが最近、オープンイノベーションのための施設運営、ビジネスプラン発表のイベント、ベンチャー企業との交流会や協業事例が増えてくるにつれて、その課題についてもよく聞くようになった。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

コワーキングスペースを作ったのに何も生まれていない。やたらとアイデアが出てきて小さな実験(POC=Proof of Concept)ばかりが乱立して、事業になるようなものがない。ベンチャーに出資してみたが、その後何をすれば価値につながるのかわからない。ベンチャーのスピード感とクオリティーに大企業のやり方が合わない、などなどだ。

このような疑問の多くは、そもそもオープンイノベーションの取り組みを何のためにやっているかという明確な目的意識やアウトプットのゴールがないことに起因する。

業務の効率化(コストカット)のためにするのか? 本業に変わる新しい事業を立ち上げるのか? ベンチャーの買収を通じて収益力を強化したいのか? それとも宣伝効果を狙ったマーケティング活動の一環なのか?

流行っているからという理由でコワーキングスペースを運営したところで何かが生まれるはずもなく、ベンチャーと交流したから未来の大きな事業機会が生まれるわけでもない。そもそも企業が存続するうえでの根幹的な活動であるイノベーションの取り組みに過度に「外」の声や役割を期待すること自体、おかしな話だ。

結局のところ、オープンイノベーションや新規事業が成功するかどうかは社内に「熱狂的なイノベーター」が存在するか否かに関わっている。

この熱狂的なイノベーターは、自ら明確な解決すべき課題や創造したい製品・サービス、顧客を喜ばせたいという情熱を持ち、それらを行動に移して実践し、貪欲に改善を繰り返していく馬力と、ミッションを実現するために周囲を巻き込む力にたけている人物である。

結局いくら「外」から面白いアイデアやベンチャーを見つけてきたところで、それを主体的に実践し、本社の懐疑派を抑え込むくらいの気概がなければ、新しいことを生むことなど不可能である。

そうなると、「熱狂的なイノベーター」となりうるイントレプレナー(企業内起業家)の育成が、大きな組織にとっての最優先課題になってくると考えている。ベンチャー企業の現場も、技術やキャピタルが事業を生んでいるわけではなく、そこに集まってくる人の思いや情熱が付加価値の源泉となり、ビジネスになっているのだ。

大企業がオープンイノベーションを真に活用するためには、社内の人材育成のあり方を見直して、ルーチン化された業務以外のことに挑戦し、失敗から学ぶことが許される環境をつくることが先決ではないか。

[日経産業新聞2018年8月7日付]

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