猛暑乗り切る「ぶらぶら運動」 自律神経をリラックス
脱力してリラックス 血行も促進

酷暑が続くこの夏、暑さによる不快感が長引くと、自律神経が乱れて、心身の不調を招く。暑い時期でも取り組みやすい「脱力・ぶらぶら運動」で、心地良い感覚を味わいながら体調を整えよう。
猛暑の中、通勤や買い物で外出したり、涼しい屋内に入ったり、室内外の温度差が大きい環境を行き来すると、自律神経の乱れを招く。快・不快への対応やホルモンの分泌、内臓や血管の働きを調節している「脳幹部」にかかる負担も大きくなり、自分の意志でコントロールできない心臓や血管にも悪影響を与える。
だからといって、エアコンの効いた涼しい部屋にこもってあまり動かずにいると、血流が悪化し、かえって体調を崩すことも。暑さが厳しい季節は、炎天下での激しい運動は避けなければならないが、適度に身体を動かすことは不可欠だ。
実際のところ、暑さによるだるさや寝不足から、この時期はあまり動きたくないと感じる人が多いだろう。疲労感や食欲不振などの不調を感じたときこそ、「快」の感覚を意識的に取り戻すことが大切。気持ちよい運動で血行を促し、自律神経をリラックスさせて酷暑をしのごう。
まずは椅子に腰掛けて、腕を下ろしてリラックス(「胸を開いて深呼吸」の写真)。親指を外に開きながら、両腕を後ろへ引く。自然と胸郭が開き、心地よい呼吸ができる。慣れたら大きく深呼吸しよう。

そのままの姿勢で腕の力を抜いて、ぶらぶらと振る(「座って腕振り」の写真)。次は脚の脱力(同右)。座ったまま肩幅程度に脚を開き、膝に手を添えて開閉を繰り返す。動かしながら、股関節や太もも、ふくらはぎの力を抜いていこう。

続いて、立った姿勢で腕振り運動(「横振り」の写真)。まずは横振りから。脚を肩幅程度に開き、上体はやや前に倒して、腕をだらんと下ろし、腕を左右に振る。少しずつ腕の力を抜いて、心地良いと感じる程度に15~20回、大きく振る。

横振りの次は、腕を前後に振る(「前後振り」の写真)。左右の腕を交互に前に振って力を抜き、慣れてきたら腕を振った勢いでそのまま一回転する。片手は前回し、片手は後ろ回しになる。腕を振るときは、膝や腰を柔らかく使い、全身をなめらかに動かすのがコツだ。

締めくくりは脚振り(「脚振り」の写真)。壁のそばに5センチ程度の安定した台を用意する。壁に手を添えて片脚を台に乗せ、反対側の脚はリラックスして下ろす。台の上の軸足をしっかり保ち、下ろした脚を前後に振る。自然に、腕が脚と交互に前後に動くはずだ。脚を緩めることで股関節の近くにある大きなリンパ節を刺激し、体液と血液の流れを促進しよう。

ポイントは股関節の力を抜くこと。脚は大きく動かさなくてよい。肩や腕には無駄な力をいれないこと。力んで動かすと、身体が反って膝や腰に負担がかかる。
記録的な暑さが続く今年は、いつもにも増して十分な休養や栄養摂取を忘れずに、脱力・ぶらぶら運動で「快」の感覚を増やしつつ体調を整えて乗り切ってほしい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2018年8月4日付]
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