電子革命 パキスタンでも
SmartTimes BEENEXT ファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英氏

2018/8/3 6:30
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インドとの国境近くに位置するラホール。人口1000万人を超えるパキスタン第二の都市を訪ねた。

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

同国は国内総生産(GDP)が年間6%強で伸び、特に最近は中国の一帯一路構想ともあいまって、膨大な金額のインフラ投資が行われている。ご多分に漏れず、デジタル革命も急スピードで進んでおり、現時点のモバイルインターネット接続数は5100万人、次の2~3年で1億人に達するといわれる。

また、インド同様にIT(情報技術)サービス、オフショア産業が発達しており、IT人材には事欠かない。ベンチャーキャピタルやインキュベータもすでに15社ぐらい存在し、少しずつスタートアップへの投資も進みつつある。

6割以上の成人が銀行口座を持たないパキスタンでは、政府が積極的にファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)政策を打ち出している。インドと同様、国民ID制度(NADRA)があり、実に1億人以上の国民IDが生体認証と共に登録されている。

それらの施策をうけてモバイルキャリア各社がモバイルペイメントサービスを展開し、2017年にはトータルで3300万人の国民がモバイルバンキングを利用している。

また、今年は中国のアリババ集団がパキスタン最大の電子商取引(EC)サイトのDarazを買収したり、中東のライドシェア最大手カリーム社が事業を積極展開し米ウーバーと火花を散らしたりと、海外からの注目も集まってきた。

SimSimウォレットの画面イメージ

SimSimウォレットの画面イメージ

その中で、レベルの高いサービスを提供しているのがラホールに本社を持つFinjaだ。SimSimというモバイルウォレットサービスを提供する同社は16年にパキスタン人起業家によってスタートしたベンチャー企業である。通常の銀行口座開設には2週間かかるところが、SimSimウォレットは、デジタル認証制度を組みあわせ、最短2分で登録できるのが特徴だ。オンライン決済もオフライン決済(QRコード決済)もでき、相手の携帯番号さえ知っていればユーザー間送金もできる。

つまり、携帯電話番号自体が銀行口座アカウントになるわけだ。しかも、店舗向け決済手数料はなんと無料。どうやって稼ぐのかと聞くと、ナノローンという短期ローンや給料の前払いサービス、マイクロ保険など様々な金融サービスを同時提供していてそちらで収益を上げるという。

今の会員数はまだ数十万人規模とのことだが、20年には登録会員1000万人を目指しており、パキスタンでの総合的なプラットフォームになっていくのかもしれない。

SimSimというのは、パキスタンの国語のウルドゥー語でゴマを指す。モバイルの力で、魔法の扉を開けるか。今後の同国のデジタルマーケットの進化に注目していきたい。

[日経産業新聞2018年8月1日付]

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