2018年11月16日(金)

米国が車の高関税を避ける一歩になれば

2018/7/26 23:06
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トランプ米大統領と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長が、新たな貿易交渉の開始で合意した。高官協議の枠組みを設け、自動車を除く工業製品の関税撤廃などを話し合うという。

これ以上の制裁や報復を自制し、対話を通じて貿易不均衡の是正を目指すのは妥当だろう。双方が平和的に問題を解決し、米国が検討している自動車の高関税を何とか回避してほしい。

米国は国家安全保障を理由とする鉄鋼やアルミニウムの制裁関税をEUにも課し、EUは二輪車や農産品の報復関税を発動した。米国は自動車の制裁関税も検討中で、EUとの貿易戦争が激化する懸念が強まっていた。

新たな貿易交渉は自動車を除く工業製品の関税撤廃に加え、米国産の大豆や液化天然ガス(LNG)などの輸出拡大を取り上げる。米国とEUが激突を避け、緊張の緩和に動くのは歓迎だ。

国際通貨基金(IMF)によると、米国が鉄やアルミ、中国への制裁に加えて各国の自動車にも高関税を課し、金融市場の混乱まで誘発した場合、世界の経済成長率を0.5ポイント押し下げるという。これほどの危険は冒せない。

それに「自動車の輸入増が米国の安保を脅かしている」と訴えるのは無理がある。国内法を都合良く利用し、世界貿易機関(WTO)のルールに抵触しかねない高関税を課すのは問題だ。

米国とEUはお互いが踏み切った制裁と報復を撤回し、自動車の高関税を回避する方向で妥協点を探るべきだ。米国はこれを機に日本やカナダ、メキシコなどへの発動も自制してほしい。

ただし輸出の数量規制や為替相場の監視強化などを要求したり、のんだりするのでは困る。自由貿易の原則を逸脱した形で交渉が決着すれば、米国と日本との新たな通商協議「FFR」や、米国がカナダ、メキシコと進める北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉にも禍根を残しかねない。

心配なのはトランプ氏の出方だ。EUとの交渉中は自動車の高関税を棚上げする考えを示唆したが、明言するのは見送った。留保を勝ち取ったと説明するユンケル氏との温度差が気にかかる。

米国は中国の知的財産権侵害に対する制裁関税を留保すると言いながら、約束をほごにした前歴がある。その二の舞いだけは避けなければならない。

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