2019年1月18日(金)

町づくり 起業と似ている
SmartTimes 社会起業大学学長 田中勇一氏

コラム(ビジネス)
2018/7/27付
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「選挙戦、すでにまちづくり」。5月に実施された岩手県岩手町の町長選挙。6回目の再選を目指す現職の圧倒的優位が伝えられる中、果敢に立候補した佐々木光司さん(58歳)。その佐々木さんをサポートする若い有能な参謀が選挙中に言い放ったのが、この名文句だ。佐々木さんは、草の根活動を通して町民の変革への期待をくみ上げ、当選を果たした。まちづくりのためのリサーチ活動がそこにあった。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

佐々木さんは、石材店の息子として町の人々にかわいがられながら育つ。のんびりした性格が災いしたのか高校も大学受験も志望校には不合格。失意の中にいた時にひとつの言葉と出合う。「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」

天台宗の開祖である最澄の言葉で、それぞれの立場で精いっぱい努力する人は国の大切な宝である、という意味だ。心を大きく揺り動かされた佐々木さんは、いつの日か一隅を照らす人材の輩出に携わりたいと座右の銘にする。

大学卒業後は地元の岩手町役場に勤務し、さまざまなプロジェクトに関わってきた。町の発展に貢献できている自負はあったものの、その成果は近隣の町に比べて物足りなく、抜本的な改革の必要性を感じるようになってきた。

そして、5期目となった町長の現体制では限界があると思った佐々木さんは、変革に向けて自ら立ち上がることを決意。加えて、地元の産業のさらなる活性化のためにはソーシャルビジネスのノウハウが必要と、社会起業大学の門をたたき地域活性の成功事例やビジネスのエッセンスを徹底的に学んだ。

そして、昨年11月、町長選への立候補を正式に表明した。次回が6期目となる現職も12月に出馬を表明。ちまたでは長期政権から新しい風への変化を望む声も聞こえてきたが、現職の地盤は強固で再選は確実という情勢だった。

しかし、佐々木さんは負ける気がしなかったと言う。手探りで後援会を立ち上げて政治活動を開始すると、次第に優秀な選挙参謀が集まるようになった。「表向きには言えないけど応援しているよ」という地元の有力者も次第に増し、何よりも佐々木さんは女性の心をとらえることにたけていて多くの支援者を獲得していった。結果は、予想を覆す佐々木さんの勝利に終わった。

40年前に心に誓った一隅を照らす人材の輩出に、いよいよ取り組むことになった佐々木さん。岩手町を潤いのある豊かな町にするだけでなく、そのノウハウを活用し今度は日本を元気にしていってくれることを期待している。

社会起業家は何も企業家に限らない。一人ひとりが生き生きと輝くことが地域の振興にもつながっていく。佐々木さんの豊かなまちづくり活動は公益資本主義の原点でもある。

[日経産業新聞2018年7月27日付]

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