2019年4月22日(月)

SDGsと自治体の政策 立案支援へツール拡充を
Earth新潮流

コラム(ビジネス)
2018/7/30 6:30
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国際社会に共通の目標である国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向け、自治体の環境政策の役割が増している。政府が4月に改定した環境基本計画もエネルギーの地産地消や資源循環の拡大を通じ、SDGsの達成をめざすとした。ただ、こうした政策立案に携わる人材は自治体にはまだ少なく、データベースなど支援ツールの拡充が求められる。

6月に公表された2018年版環境白書には、見慣れぬ日本地図が掲載された。「各自治体の地域内総生産に対するエネルギー代金の収支比率」と題し、全国すべての市町村ごとにエネルギー生産額と消費から収支を計算した。黒字なら青、赤字だとオレンジ~赤で色分けしてある。

全体では9割以上の市町村が赤字で、エネルギーの地産地消はまだ壁が高いことを物語る。だが風力や水力、バイオマス(生物資源)発電など再生可能エネルギーを積極的に導入して黒字転換を果たしたり、赤字脱却をめざしたりする自治体は徐々に増えている。

白書はその一例として森林資源を利用してバイオマス産業の育成をめざす北海道下川町や、官民基金を設けてエコツーリズムに力を入れる滋賀県東近江市の取り組みを紹介。持続可能な社会の実現に向け、地域の取り組みがカギを握るとした。

国連のSDGsは温暖化対策や生態系保全など17の目標を掲げ、2030年までに達成を求めている。日本も官民あげて達成をめざすことを決め、政府が6年ぶりに改定した環境基本計画も「地域循環共生圏の実現」をキーワードに掲げた。

問題になるのが、持続可能な社会に向けた政策づくりのための知識や経験をもつ人材が少なく、特に市町村に乏しいことだ。長い目で人材を育てる必要があるほか、短期的にはデータベースや情報分析など、政策立案の支援ツールの拡充が望まれる。

再生エネの利用拡大はSDGs達成の有力手段(北海道苫前町の風力発電所)

再生エネの利用拡大はSDGs達成の有力手段(北海道苫前町の風力発電所)

環境省が昨年7月からホームページで提供している「地域経済循環分析自動作成ツール」はそのひとつだ。日本政策投資銀行と共同開発し、全国1700自治体の産業連関表や地域経済計算などの主要な経済データを収録。地域の産業構造やエネルギー・資源生産性などを分析できる。

環境白書に載せたエネルギー収支地図もこのツールで作製した。森本英香環境事務次官は「政策効果を比較できれば自治体にとって励みになる。エネルギー収支のような指標を複数つくり、自治体の政策づくりを後押ししていきたい」と語る。

分野は違うが参考になるツールもある。防災科学技術研究所がインターネット上で提供する「地域防災Web」だ。市町村名を入力すると人口や高齢化率、財政力指数などの基礎データのほか、地震、津波、洪水など自然災害のリスクを5段階で示してくれる。

例えば6月の大阪北部地震で被害が出た大阪府高槻市は、地域防災Webでも地震や土砂災害リスクが高い地域と災害前から指摘されていた。都市の規模や災害リスクが似た自治体を表示する機能もあり、「市町村同士が情報交換して防災対策に役立てる例も増えている」(同研究所)。

環境省の地域経済循環分析ツールはエコノミストや研究者向けという性格が濃く、自治体職員らにとっては使いづらい。新たな指標を開発して自治体の政策を評価するだけでなく、自治体にとって使い勝手のよい支援ツールを提供するのも国の重要な役割だ。

(編集委員 久保田啓介)

[日経産業新聞2018年7月27日付]

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