2018年11月16日(金)

遺伝性がんの薬を生かすには

2018/7/16 22:04
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親から子へ遺伝する遺伝性乳がんの治療薬が日本で初めて承認された。使うには特定の遺伝子の異常が原因かどうかをまず検査するが、その際、患者の子どものがん発症の可能性が高いこともわかる場合がある。医療機関のカウンセリングなど支援態勢が必要だ。

新薬は、がんの引き金として知られる「BRCA遺伝子」の異常がある乳がんの患者向けだ。英国の製薬大手アストラゼネカが開発し、米欧でも承認されている。

この遺伝子が異常で、かつ従来の薬では治りきらない再発患者らが、日本では新薬の対象となる。乳がんと診断される年間およそ9万人のうち、数百~1000人程度にあてはまると推定される。

BRCA遺伝子に異常のある女性の半数前後は、70歳までに乳がんになる。発症の確率は異常がない人の10倍近いとされる。がんの進行や、それによる死亡のリスクを、新薬は従来の薬に比べ4割程度減らせるという。

この新薬を生かすうえで忘れてならないのは、遺伝子の異常が親から子へ引き継がれることへの目配りだ。いつ、どのように子に伝えるのか。早期に発見し治療する方法はないのか。こういった患者の悩みは大きいと考えられる。専門家による患者や家族への十分な説明、精神面の支援が大切だ。

だが、その担い手が日本では少ない。日本人類遺伝学会などの「認定遺伝カウンセラー」は226人。米国の約4千人に遠く及ばない。社会的な認知度も低い。国をあげ人材育成を急ぐべきだ。

どの病院なら正確な診断や行き届いた支援を受けられるか、といった情報も重要だ。日本乳癌学会と日本産科婦人科学会などが連携して施設を認定し公表する取り組みを始めたのは、一歩前進だ。

多くの病気と遺伝子とのかかわりが解明されつつある。遺伝子検査をもとに使う薬が増えるのは確実で、態勢整備は待ったなしだ。遺伝情報が原因で採用や保険加入が不利になったりしないよう、法制度などの検討も急務である。

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