2018年7月20日(金)

米社会を変える最高裁人事

社説
2018/7/13付
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 トランプ米大統領が連邦最高裁判所の新しい判事に連邦控訴裁判所のブレット・カバノー判事を指名した。司法判断が従来と変わる可能性があり、米社会にあつれきをもたらすおそれがある。金融規制のあり方など日本に影響がある分野でも一家言あるとされる。動向を注視したい。

 最高裁の9人の判事は現在、保守系とリベラル系が各4人で、高齢を理由に退く中間系のアンソニー・ケネディ判事の1票で方向性が決まることが多かった。5対4の僅差だった2015年の同性婚の合憲判決は代表例である。

 カバノー氏は保守色が濃く、同性婚や妊娠中絶などに後ろ向きである。こうした国論を二分しかねない問題で、司法判断が百八十度変われば混乱は免れない。就任には上院の承認が必要だが、野党の民主党は反発している。

 懸念されるのは、カバノー氏が過去に「現職大統領は犯罪捜査の対象から外すべきだ」との趣旨の論文を発表していることだ。ロシアゲート疑惑の渦中にあるトランプ氏が自らへの捜査を妨げる目的で人選をしたのだとしたら、司法への信頼を損なう。

 他方、米経済界はカバノー氏の指名を好感している。消費者金融保護局(CFPB)の権限縮小を唱えているからだ。同局は2008年のリーマン・ショックを踏まえ、オバマ前政権が新設した金融規制のための機関だが、経済界は自由な経済活動を阻害していると批判してきた。

 カバノー氏の最高裁入りは、トランプ政権が進める金融規制の緩和を加速させる要因になるのか。影響は米国内にとどまらない。上院の公聴会におけるカバノー氏の発言をよくみていきたい。

 連邦最高裁の判事は原則として終身制のため、米社会への影響は長く続く。近年は思想傾向が似た人物が引き継ぐことが多く、さほど問題にならなかったが、今回の人事で半世紀近く続いた保守とリベラルの均衡が崩れる。米国は新たな岐路に立つことになる。

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