人に替わる クラウド管理
新風シリコンバレー (ジョアナ・ドレイク氏)
主要な企業は過去10年あまり、限定的な範囲でクラウドコンピューティングに移行してきた。現在では「アマゾンウェブサービス(AWS)」、「グーグル・クラウド・プラットフォーム(GCP)」、「マイクロソフト・アジュール」などのパブリッククラウドのサービスが整い、企業はこれらを使ってIT(情報技術)のインフラを根本的にクラウドに移行している。

クラウドへの移行は単なるサーバーやストレージ、ソフトウエアの場所を変えるだけではない。企業が使うソフトがメインフレーム(大型汎用機)からサーバーに移ったように、企業のアプリケーションがクラウドに移行することは情報システムの設計や管理などの面で深い意味を持つ。
そこには「クラウドネーティブ」という科学技術者の集団が存在し、業界の行方を主導している。コア・ベンチャーズ・グループが投資しているベンチャー企業、ヴォーステラの最高経営責任者(CEO)を務めるマット・スタンプ氏はその好例だ。
――共同設立者のアビナッシュ・マンダヴァ氏とともにシリコンバレーで最も成功を収めたベンチャー企業の1社であるデータスタックスで仕事をされていましたね。起業するきっかけは何でしたか。
「データスタックスではインテュイット、ネットフリックス、ソニーなどの優良企業のクラウド展開の仕事をすることができました。大企業は専門知識を有する人材の採用ができない類似した問題を抱えていました。いかなるテクノロジーでも専門性の習得には何年もかかり、需要を満たす専門家の数は十分ではありません。ヴォーステラのテクノロジーでこうした顧客の課題に対処することを考えています」
――どんなサービスを提供しているのですか。
「機械学習に基づいた『クラウド・ヒーロー』は、従来のインフラからクラウド仕様のツールに簡単に移行できます。24時間体制で顧客のクラウドを監視して安定的な運用を確保するとともに、無数のデータポイントを使って継続的にシステムパフォーマンスを最適化しています」
――すでに導入している実例はありますか。
「上場する銀行はインフラの主要部分をクラウドに移行し、規制当局の承認を受けて数週間後に運用を始めました。導入後はシステムの速度は20倍に、遅延は60%減りました。6カ月あまりにわたるデータ不一致の原因となっていた不具合を特定しました」
――そのテクノロジーは世界の専門家の能力を上回る自信がありますか。
「実証済みです。クラウドはより複雑になり、新しいテクノロジーがこれまで以上のペースで発表され、集まるデータの量は人間が理解できる能力を上回ってきます。企業のIT管理者たちは『専門家をスケーラブル(拡大)できない』ことを理解しています。ヴォーステラのソリューションはスケーラブルで、新しいテクノロジーに鍛えられれば鍛えられるほど良くなっていきます」
[日経産業新聞2018年7月10日付]
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