2018年9月21日(金)

長期的な成果へ公的年金運用を透明に

2018/7/7 21:42
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 公的年金の積立金運用が2017年度に10兆810億円の収益を上げた。年金財政が厳しいなかで朗報の一つである。とはいえ運用環境は常に変化する。長期にみて安定かつ効率的に成果を上げる運用にいっそうつとめてほしい。

 厚生年金や国民年金を運用するのは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で、156兆円の資産を持つ。国債中心だった運用を14年に変更し、株式などリスク資産を増やしてきた。

 17年度末で国内外の株式比率は資産の49%に上がってきた。株式保有は経済成長の果実を得る狙いがある半面、価格の変動を伴う。昨年末までの世界的な株高が年間の運用収益を押し上げた。ただ逆に株価が下がった1~3月だけをみれば、5兆円強の損失だ。

 短期的な動きに一喜一憂する必要はないが、年金財政の安定へ、数十年という視点でリターンを確保することが大きな責務だ。

 その意味でGPIFによる「スチュワードシップ・コード」への取り組みは注目できる。運用を委託する民間の運用会社に対し、投資先企業の価値向上にもっと積極的に関与するよう求めている。

 環境や社会との共存も意識しつつ企業が経営効率を上げ、市場の評価が高まれば、運用収益の底上げにつながると期待できよう。

 委託先の運用の巧拙によって支払う手数料に差をつける方法も新たに導入した。運用努力を引き出す試みだが、委託先が必要以上の賭けに出てリスクを取り過ぎないよう厳格な管理が欠かせない。

 株式や債券と異なる「オルタナティブ」に投資を広げることは一定の分散効果につながる。ただインフラや未公開株への投資は時価がつかず、中身がみえにくい。

 蓋を開けば思わぬ損失が出ていた、といったことのないよう透明性の高い運用が必須だ。政治的な利用を招いてもならない。

 巨額の資金を動かすGPIFは「池の中のクジラ」と呼ばれる。自分自身の取引で市場価格を動かしてしまうからだ。将来的に積立金の取り崩しや配分の変更が必要な際、市場への影響を抑えつつ保有資産をどう手放すか、といった議論もしておくべきだ。

 国民の大切な年金資産を誰がどう判断して運用しているのか、事後検証も可能な形での情報開示の充実が欠かせない。国民に向けて説明責任を尽くすことが、これまで以上に重く求められる。

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