2018年11月20日(火)

刑執行で終わらぬオウム事件

2018/7/7 1:10
保存
共有
印刷
その他

地下鉄サリン事件などオウム真理教による一連の事件で死刑が確定していた元教団代表、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の刑が執行された。ほかに、同じように刑が確定していた6人の元教団幹部についても執行された。

地下鉄サリン事件から23年、松本元代表の死刑確定から12年。事件や司法手続きという面では大きな節目を迎えたことになる。だがこれで「オウム事件」が終わったわけでは、決してない。

オウム真理教をめぐっては、長期にわたる裁判などを通して、多くの「なぜ」を解明する取り組みがなされた。それにもかかわらず、明確な答えや教訓を十分に得ることができないまま、ここまで来てしまった感が強い。

最大の「なぜ」は、学歴も常識もある、素直で真面目な多くの若者たちが教団に魅入られ、教祖のもとで無差別殺人に突き進んでいったという事実である。

若者たちを引き入れた教団がヨガのサークルから、やがてテロ集団へと変容していったのは、昭和の終わりから平成にかけてだ。日本の経済や社会構造が大きく変わった時代と重なる。

バブル経済とその崩壊や急速に進む国際化の中で、それまでの価値観や人生のモデルが揺らぎ、教団が唯一のよりどころに見えたのかもしれない。だが教団は国家の転覆を目指し暴走する。妄動であってもそれを科学技術が実現してしまいかねない危うさは、いつの時代にもあることだ。

「オウム」が終わっていないことは、教団の後を継ぐ団体に、いまも新たな信者が入信していることが証明している。街角や大学やインターネットの世界から、若者を狙うカルト的な集団が姿を消したわけでもない。

「孤立感」「現状への不満」「極端、過激な思想の流布」といった、若者たちをオウムの闇に落とし込んだ状況はむしろ強まっている。松本元代表らの死刑執行を受け、社会のありようを改めて見つめ直していきたい。

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報