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人事戦略が成否を左右

SmartTimes (村松竜氏)

「人員計画を見せてください。この10人はどのように採用する予定ですか」「このCTO(最高技術責任者)のA氏と技術部長B氏はどのような方なのでしょうか。なぜこのような体制図になっているのでしょうか」――。

ベンチャーキャピタル(VC)という仕事柄、起業家の事業計画書をよく見させていただきます。私が最初に質問することにしているのは、その中の「採用計画」と「体制図」つまり「人」に関するパートです。事業の成否は、ここに強い相関関係があるからです。

自分が新米のキャピタリストだった頃は、業績計画や成長戦略にばかり気が取られていました。しかし独立し自身で事業会社を経営して、採用や体制作りがうまくいかないと業績計画や成長戦略など1ミリも先に進まないことを学びました。いかに人事戦略が重要か、嫌というほど思い知らされました。

七転八倒の事業会社経営に道筋がつきVC業界に再び戻ってきてみると、成功する起業家ほど、この「人」のパートの質問に明確に答えられることが分かりました。例えば冒頭の質問に対して、こんなふうに返してくれます。

「これからの6カ月間で営業を5人、技術者を5人採用します。前職場で営業部長として50人の部下を採用した経験から、5人の営業は経験豊富な35歳と若手20代の4人で構成します。すでに前職の部下を含む候補者が20人ほど、順次入社予定です」

「私は営業畑なので、カリスマ性のあるプログラマーのA氏を共同創業メンバーに誘いました。彼のスキルと知名度で若手技術者の採用が決まるからです。先ほどの体制図に対する質問ですが、A氏は部下を持たないCTOとして技術の方向性の研究や対外的発信を担当します。一方、B部長は部門のマネージを含めた技術に関する一切の実務に専念します」

このように具体的に説明してくれる起業家は、前職の人事配置で成功も失敗も経験しています。ゆえに自身の起業における「山頂までの正しい道筋」がはっきりと見えています。

もちろん計画どおりには進みません。

しかし人事戦略の「地図」をクリアに説明できる起業家は、計画どおりに進まなかった時の対応が非常に早い。常日ごろから、ああでもない、こうでもないと考えているからです。

しかし残念ながら、ここを軽視してしまう起業家は少なくありません。冒頭のような質問に対して、答えられないか、もしくは答えたがらないのです。私もそうでした。

私たちのVCでは、この人事戦略を専門家を交えてお手伝いしています。起業家と一緒に策を考えさせていただくたびに、自身のかつての試行錯誤の教訓が頭をよぎり、つい力が入ってしまいます。

[日経産業新聞2018年7月6日付]

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