2018年9月20日(木)

ESG投資、国内で急増 リスク情報の開示重視
Earth新潮流 (相馬隆宏氏)

コラム(ビジネス)
2018/7/6付
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 環境や社会、ガバナンス(企業統治)といった非財務情報も重視するESG投資が国内で急増している。日本サステナブル投資フォーラムの調査によると、国内のESG投資額は2017年、約136兆円となり、前年から2.4倍に増えた。

ANAホールディングスは環境規制の強化に備える=ANA提供

ANAホールディングスは環境規制の強化に備える=ANA提供

 企業は財務と非財務情報を融合した統合報告書や環境・CSR報告書、ウェブサイトなどで、ESG情報を充実させている。これらの情報を企業の評価に活用する投資家が特に重視しているのが、リスク情報だ。

 大和証券エクイティ調査部の山崎徳司担当部長は、「リスク情報の開示がないと投資家は判断できない。結局、その企業には投資しなくなる」と話す。投資を呼び込めないばかりか、リスクの認識が甘い企業と判断され、企業価値を下げる恐れもある。

 例えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用するESGインデックス(株価指数)を作成する評価機関は、公開情報だけで企業を評価するため、要求されている情報を開示していない企業は評価を落としている可能性がある。

 自社にどういうリスクがあり、それに対してどう備えているか。リスクの認識と対策を明示することが、投資家の評価を高める第一歩になる。

 ANAホールディングスは、統合報告書で自社が把握している機会とリスクを開示している。航空事業全般に関わるリスクとして挙げている項目の一つが、環境規制の強化だ。

 温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定が発効し、航空業界でも二酸化炭素(CO2)の排出抑制が強く求められている。取り組みが不十分な場合、排出クレジットの購入でコスト負担が増すリスクがある。統合報告書では、省燃費機材の導入や運行方式の工夫などによって、燃油費や将来の排出クレジット購入コストの抑制につなげることを示した。

 ガバナンスの面で投資家が注目するリスクとして、社長の交代がある。6月に公表された改訂コーポレートガバナンス・コードでは、経営トップの選任と解任について取締役会が適切に監督すべきだと示された。

 野村アセットマネジメント責任投資調査部シニアESGスペシャリストの宮尾隆氏は「ガバナンスについて、日本企業で特に重要なのがサクセッションプラン(後継者育成計画)だ。中でも長期間務めた社長の交代はリスクが大きい。後継者の育成制度がどうなっているかを開示しているところは高く評価できる」と言う。

 塩野義製薬は社長交代をリスクと見られている一社である。08年に社長に就任した手代木功氏は、業界で「手代木マジック」と評されるほど卓越した手腕を発揮し、同社の株価を10年で3倍に引き上げた。

 最大のリスクは手代木社長の交代と見る投資家が少なくない中、統合報告書でサクセッションプランを明記するようにした。若年層から中堅層、幹部層までを対象に多種多様な人材育成プログラムを用意。手代木社長自ら幹部層を育成する「社長塾」では毎年10人前後を選抜し、年7~9回開催する。現在の執行役員4人も社長塾の卒業生だ。

 ここまで踏み込んでプランを開示しているケースは珍しく「投資家もこの部分に最も関心を寄せている」(経営戦略本部広報部の神山直樹・IRグループ長)と言う。

 「企業には、成長機会だけでなくリスクも開示してほしい。投資家はリスクをネガティブにとらえると思っているかもしれないが、リスクを開示してその対応策に取り組む姿勢が確認できればむしろ評価する」(野村アセットマネジメントの宮尾氏)

 リスク情報の開示に後ろ向きな企業は少なくないが、いまや開示しないことがリスクになるとされる。ESG投資家などステークホルダーの信用を得るためには、企業は意識を変える必要があるだろう。

[日経産業新聞2018年7月6日付]

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