中国AI監視社会の危うさ - 日本経済新聞
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中国AI監視社会の危うさ

人工知能(AI)を使った顔認証から、交流サイト(SNS)と一体化した個人の決済情報までを連動する社会管理システムが、中国で動き出した。目的は犯罪防止とされるが、一連の情報は共産党一党独裁に批判的な人々の監視にも利用できる。人権保護の観点から透明な運用を求めたい。

システムの核となるのは、全国の街角に設置する監視カメラとAIを結ぶ顔認証である。今はまだ試験段階だが、全国統一の運用計画が始動している。人工衛星による中国独自の測位システムにも連動させる方向だ。

最先端技術の育成をめざす「中国製造2025」と名付けた長期の産業政策を、中国は2015年に打ち出した。そこでは社会管理に絡むAIとインターネットの融合や、人工衛星を含む宇宙科学技術も重点項目だ。

そもそも中国では、高速鉄道ばかりか一般の鉄道の切符を買うのにも、ICチップ内蔵の身分証明書を提示して実名登録する必要がある。西安の兵馬俑といった世界遺産への入場も同じだ。

SNSでの個人間のやり取りも厳格な監視の対象で、それにつながるキャッシュレス支払いの内容も当局はチェックできる。習近平政権を批判する文章を何回か発信すれば最後はアカウントが停止され決済不能になる。そうなれば、現金を持ち歩かなくなりつつある中国人の生活は成り立たない。

こうした監視はビッグデータの処理技術がもたらした。科学技術の発達が14億人もの国民の管理を可能にしたわけである。インターネットには当初、政府から干渉されない自由な意見交流の場というイメージを世界の人々が抱いたが、それが崩れている。

民主化を訴えた学生らが中国軍の武力行使で死傷した痛ましい天安門事件から、既に29年。徹底した情報統制で事件そのものの風化が懸念され、さらに情報化時代が生み出した新たな人権問題が浮上している。それは中国だけではなく全世界の課題でもある。

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