2019年2月22日(金)

大学発VB 躍進の時代に
SmartTimes (伊藤伸氏)

コラム(ビジネス)
2018/6/29付
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大学の研究成果を産業界へ移転するための大学等技術移転促進法(TLO法)施行から今年でちょうど20年。この間、大学発ベンチャーの状況は激変した。

新聞記者を経て、2001年農工大ティー・エル・オー株式会社設立とともに社長に就任(現任)。2013年から東京農工大学大学院工学府産業技術専攻教授。大学技術移転協議会理事。

新聞記者を経て、2001年農工大ティー・エル・オー株式会社設立とともに社長に就任(現任)。2013年から東京農工大学大学院工学府産業技術専攻教授。大学技術移転協議会理事。

サイバーダインPKSHA Technology(パークシャ)、サンバイオ。東証マザーズの時価総額上位には大学発ベンチャーが並ぶ。東証1部に移行したペプチドリームユーグレナがマザーズに上場していた2014年には市場全体の時価総額の5分の1程度を大学発ベンチャーが占めることもあった。新陳代謝が重要な新興企業向け株式市場では不可欠な存在になった。

東京大学は、15年には同大関連のベンチャーが200社を突破し、合計の企業価値が1兆円を超えたと推計した。高水準の研究力も理由だが、人的ネットワークやロールモデルとなる身近な成功例に触れられる機会といった集積効果が表れているのは間違いない。

文部科学省調査によると、大学発ベンチャーの新規設立は、国が旗を振った「1000社計画」を04年度に達成した後は減少傾向にあったが、この数年は再び増加している。16年度には127社が設立され、17年3月末時点で1698社が存続している。

大学の研究成果はイノベーションの源泉とされるため、大学には社会からイノベーション創出への貢献という圧力がかかる。同時に「商業化する大学」への懸念や批判に耐えうるマネジメントも求められる。大学からの一つの回答が大学発ベンチャーであろう。

私が所属する東京農工大学でも最近、大学発ベンチャーの傑出した事例が生まれた。医薬品開発のティムスが、米製薬大手のバイオジェンに脳梗塞の治療薬候補物質について独占的オプションを与える契約を締結したのだ。

ティムスは一時金400万ドルに加え、開発と販売の状況に応じて最大3億3500万ドルの一時金と売り上げに応じた実施料の支払いを受ける可能性がある。「日本のバイオベンチャーが化合物を製薬企業に提供する形の提携では最大規模」(若林拓朗社長)。候補物質には、既存薬では脳梗塞の発症から4.5時間以内に制限されている治療可能時間を大幅に延長できるのではとの期待がかかる。

ティムスは、カビの一種から候補物質を発見した蓮見恵司教授が研究成果の実用化のために05年に設立した。蓮見教授は、他大学とも連携しながら研究開発と経営の両方をけん引してきた。若林社長は大学発ベンチャー向け投資をいち早く手掛けてきたキャピタリスト。途中から経営へ参画し、今回の交渉もまとめた。

ティムスと私が現在も兼務する農工大TLOが産官の資金を組み合わせる研究助成プロジェクトを実施してから10年が経っている。長期的な視点に立脚した大学内の支援システムも欠かせない。

[日経産業新聞2018年6月29日付]

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