BP統計が映す「不都合な真実」 石炭削減より経済成長
Earth新潮流

2018/7/2 6:30
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英メジャー(国際石油資本)BPが毎年公表する「世界エネルギー統計」はエネルギー関係者が注目する統計資料だ。13日に発表された2018年版からは、思惑通りにはいかないエネルギー転換の現実が見えてくる。

インドの石炭消費は前年比で5%近く増えた(グジャラート州の石炭火力発電所)=ロイター

インドの石炭消費は前年比で5%近く増えた(グジャラート州の石炭火力発電所)=ロイター

「17年のデータにはやや失望するかもしれない」。とりまとめ責任者であるスペンサー・デール・グループチーフエコノミストは指摘した。「エネルギー需要は伸びたが、石炭消費量が4年ぶりに増加し、3年間横ばいが続いた温暖化ガスも増えた」(同)からだ。

17年のエネルギー消費は堅調な世界経済の成長を背景に、前年比2.2%増と、過去10年の平均伸び率を上回る伸びを記録した。石油・天然ガスや再生可能エネルギー、原子力などすべてのエネルギー源が増えた。

注目は石炭だ。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」の発効を受けて、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭には厳しい目が向けられている。14年以来3年連続で世界消費は減少し、退潮を裏付ける根拠になってきたが、17年は前年比1%の増加に転じたからだ。

要因はまず、中国だ。中国は世界消費の5割を占める最大の石炭消費国だ。政府が大気汚染対策などを理由に国内での生産・消費を抑制した結果、同国の石炭消費は16年まで3年連続で減少し、世界消費を押し下げた。

中国の17年の石炭消費は同0.5%増。中国のエネルギー消費は同年、3.1%増と4年ぶりの高い伸びになった。政府は発電燃料の液化天然ガス(LNG)への転換を急ぐが、LNGで補えない発電需要を石炭が満たしたとみられる。

第2位の石炭消費国であるインドが同4.8%増えたのも、電力消費の拡大が理由だ。生産にも変化が起きた。米国は中国に次ぐ世界第2位の石炭生産国だ。生産量は過去10年間、年平均4.7%のペースで減ってきたが、17年は6.9%の増加に転じた。

石炭産業の復活を掲げるトランプ政権の誕生も追い風とみられるが、米国内の消費は17年も2.2%減った。増えた米国産石炭が向かったのは海外だ。このことが示すのは、強まる脱化石燃料の流れの一方で、経済成長を逃したくない新興国の現実的な判断と、経済成長と温暖化対策の両立の難しさだ。

デール氏はエネルギー利用をめぐる長期的な構造変化は続き、17年の結果は短期的な調整との見方を示す。石炭の増加も一時的かもしれない。ただし、同氏が「データを見るまでわからなかった」と嘆いたのが、過去20年の電源構成の変化の乏しさだ。

電力部門は温暖化ガスの最大の排出源だ。パリ協定の目標達成には電力部門の対策が不可欠だ。しかし、17年の発電に占める石炭火力の比率は38%と、1998年と同じだった。

17年に増えた発電量全体の約半分を太陽光や風力が占めるなど、再生エネは急成長している。しかし、原子力のシェア低下を補えておらず、温暖化ガスを出さない非化石電源のシェアは20年前よりむしろ減っている。電源分野で見れば、「世界は立ち止まり続けてきた」(デール氏)こともまた皮肉な事実なのだ。

(編集委員 松尾博文)

[日経産業新聞2018年6月29日付]

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