2018年7月20日(金)

再生医療研究の裾野広げよ

社説
2018/6/24付
保存
共有
印刷
その他

 京都大学は7月にも再生医療向けに、受精卵から作る万能細胞の提供を始める。同細胞を使う治療研究は世界で活発だが、別の万能細胞であるiPS細胞を重視する日本は出遅れていた。これを機に産官学で研究の裾野を広げ、柔軟に治療法開発を進めるべきだ。

 受精卵から得る細胞は胚性幹細胞(ES細胞)と呼ばれる。日本は倫理上の問題から治療研究のための作製や利用を認めていなかったが2014年の指針改定で解禁し、京大が提供の準備を整えた。

 ES細胞は英国で開発され、体のすべての細胞を作ることができる。その能力はiPS細胞を上回り、再生医療に使った時にがんができる可能性も小さいとされる。

 生命の芽生えである受精卵を壊すことには批判もある。米政府は一時期、連邦予算による研究を大幅に制限した。ローマ法王庁は今もES細胞研究に異を唱える。

 しかし、不妊治療用に作られて余った受精卵のみから作製するなどの条件で、ES細胞の治療応用を認める動きは世界的に広がっている。米欧や韓国で再生医療の臨床試験が進む。

 国内でも体外受精の増加に伴って凍結保存される受精卵は増え、使用した残りの多くは廃棄される。それらを医学研究に生かすのは1つの選択肢だろう。

 医師や研究者が、もとになる卵子、精子の提供者に研究の意義を説明し同意を得る必要があるのは言うまでもない。協力を強要してはならず、手続きは厳格に実施しなければならない。

 京大が初めてES細胞を作ったのは03年に遡る。文部科学省や厚生労働省は日本発のiPS細胞技術を最優先し、ES細胞については海外の動向を様子見していた。利用法の議論や制度づくりは進まず、治療応用で出遅れた。企業もリスクを嫌い慎重だった。

 ES細胞の研究は、データを比較してiPS細胞をより安全に使う手がかりを得るのにも役立つ。研究の「ガラパゴス化」によって可能性を狭めることは避けたい。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報