ゲーム産業を健全に育てるために
国民の2人に1人がスマートフォンなどでゲームを楽しむ時代になった。娯楽だけでなく、介護や地域おこしなど様々な分野で活用する動きが広がっている。
日本経済を支える成長分野になる一方で、世界保健機関(WHO)がゲーム依存を新しい疾病として認定するなど、やり過ぎによる依存症のリスクを指摘する声もある。対策に手を尽くしながら、産業として健全に育てていくことを考えたい。
世界のゲームソフト市場は2017年に10兆円超と、前年比で2割伸びた。国内でも携帯端末向けアプリだけで1兆円を超えた。身近な場所などで手軽に遊べるゲームの関連市場は、今後も高い伸びが予想されている。
迫力ある映像や物語性など人をひき付けるノウハウは、店舗の集客や地方のイベントにも応用されている。脳を刺激するゲームは高齢者の介護予防にも活用される。
日本はかつてゲーム機や専用ソフトで一時代を築いたが、スマホ向けへの対応が遅れ、海外勢に主導権を奪われた。再びこの分野で世界をリードするには、優れた人材の確保が欠かせない。
そのためには、例えばソフト開発者の待遇や労働条件の改善に取り組む必要がある。一部の下請け企業では、低賃金で厳しい納期を求められる例があるとされる。
IT教育の拡充も重要な課題だ。20年度には小学校でプログラミング教育が必修となる。米国や韓国、フィンランドでは、考える力を育てる目的でゲームづくりを授業に取り入れている。
競技として対戦する「eスポーツ」も伸ばす余地がありそうだ。世界では五輪種目への採用を求める動きもある。日本でも19年の国民体育大会で文化プログラムとしての導入が決まった。政府は今年の骨太の方針でクールジャパン戦略の一環として言及している。
ゲーム産業を健全に伸ばしていくうえで欠かせないのが、依存症の問題への対応だ。WHOはゲームのやり過ぎで日常生活に支障が出ることを「ゲーミング障害」と呼んで警告している。
スマホメーカーがアプリの利用時間を制限したり、自治体が子供の利用ルールを定めたりするなど、行政と業界、教育現場、家庭が連携して弊害をなくす取り組みが必要だ。個々の消費者が節度ある利用で自らの身を守ることも忘れてはならない。