2018年11月14日(水)

「ニンテンドーラボ」が示す可能性 デジタル+アナログに勝機
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2018/6/15付
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皆さんは「ニンテンドーラボ」をご存じだろうか。

これは名前の通り任天堂が発売した新しい商品で、段ボールとゲーム機を組み合わせた新しいコンセプトのゲーム。推定販売本数は20万本を超えたともいわれており、日経MJの「2018年上期ヒット商品番付」の前頭にもランクインしていたのを見た読者も多いだろう。

段ボールとゲーム機を組み合わせて遊ぶ「ニンテンドーラボ」(C)2018 Nintendo

段ボールとゲーム機を組み合わせて遊ぶ「ニンテンドーラボ」(C)2018 Nintendo

ニンテンドースイッチのゲームといえば、販売本数が数百万本規模のゲームが少なくないことを考えると、20万本は大ヒットと呼べる数ではない。

ニンテンドーラボが画期的なのは、段ボールという、ビデオゲームとは最も関係なさそうな存在であるアナログの部品をデジタルのゲームと融合したことだ。さらに興味深いのは、それを具現化している技術が、実は赤外線カメラであるという点だ。

例えば、自分がロボットになりきる「ロボットキット」。段ボールで作ったロボットを操作しているプレーヤーがパンチをすれば、画面上のロボットがパンチをするし、足を交互にあげればロボットが歩く。

当然、ニンテンドースイッチや前身のWiiを持っている人が、このロボットの仕組みを想像すると、コントローラーを手にもってパンチをするだろう。

Wiiやスイッチのコントローラーには「加速度センサー」が内蔵されているので、コントローラーの動きを感知してプレーヤーがパンチをすれば、ゲーム内でもパンチをすることができる。

この技術を使ったゲームはWiiやスイッチでも複数発売されており、ある意味、任天堂が切り開いた新しい体感ゲームの分野だった。

だが、ニンテンドーラボのロボットでは両手の動きだけでなく、両足の動きも感知する。普通の人なら「なるほどコントローラーが両手両足の4つ必要なんだろうな」と想像するはずだ。ところが、ニンテンドーラボで必要なのはコントローラー2つだけ。

正確には両手両足の動きを認識するのは、赤外線カメラがついたコントローラー。段ボールで作られたカラクリの仕組みで、両手両足のひもにつながれた段ボールの箱に張られた反射シールが、大きなランドセル型の段ボールの中で上下するのを赤外線カメラが読み取るという仕組みなのだ。

ある意味、両手両足にひもが付いたからくり人形と考えれば、想像しやすいだろうか。従来のテレビゲーム業界の進化は、Wiiの加速度センサーや、Xbox Kinectのジェスチャー認識カメラ、プレイステーションの仮想現実(VR)と、複雑な技術を活用する方向に進み続けていたように見える。

任天堂が次なるイノベーション(革新)を生む仕掛けとして選んだのが、赤外線カメラと紙の反射シールという組み合わせというのは新鮮な驚きだった。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

このアナログとデジタルの接点を模索するという視点は、様々な分野でも有効なはずだ。

例えばスマートフォン(スマホ)の電子決済でも、世界的にSuicaなどの非接触技術を使ったモバイル決済が本命だと考えられてきた。中国ではアリペイなどのQRコード決済が市民生活に浸透し、あっという間に「電子決済国家」を実現してしまった。

非接触技術側の決済方式は、専用の端末の導入が必要だが、QRコード決済は、QRコードを紙に印刷するだけで誰でも利用できるというのが普及のポイントとなった。

常に最新技術を導入するのがベストとは限らない。アナログとデジタルの組み合わせには、思いもよらない可能性があるはずだ。

[日経MJ2018年6月15日付]

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